神田テラス

2017 / ランドプール

神田小川町・靖国通りの裏に位置する、3面が道路に面した細長い区画にある飲食テナントビル。

飲食テナントビルを設計する際には、テナントをどのように集合させて、どのように街並みに関わらせていくべきかを考える必要がある。1階は街を行きかう人々に直接アピールできるが、上階になるとレストランが集合した建物のイメージをビルとしてつくり、このビルに来れば何らかの満足できる魅力的なレストランに出会うことができるというアピールが必要である。

このビルでは、前面道路に面してビルの外形を穿ったヴォイドをつくり、立体的な垂直ガーデンテラスを提案した。前面のテラスは階によって大きさや形状が異なり、変化のあるテラスが積層している。上下階で抜けている個所をつくり連続させることで、上階でも接地感を出している。ここでは、人と交通が行き来する都市のダイナミックなスペースのなかで食事をするという体験を得ることができる。

また、積層する飲食ビルでは個々のテナントが完全に独立してしまっていることが多いが、このビルではそれぞれのテナントがもっとお互いに関りを持ち、それぞれのレストランの客が、別のレストランにも来店していただく相乗効果を狙っている。

側面の道路に面している部分は開放的なので、全面ガラス張りとし、外から各レストランの内部が見えるようにするだけでなく、中からも開放的な空間を享受できるようにした。オフィスビルのような外観になることを避けるため、飲食の内装の雰囲気に合わせやすい黒の格子状のサッシュとした。

容積率一杯の全階飲食テナントという商業的効率を要求される都心の中高層ビルで、ポーラスなヴォリュームによってできた各階のテラスを都市に開くことで、新たな公共性を備えた建築を提案した。

敷地:東京都千代田区
用途:テナントビル
竣工:2017年9月
設計監理:小山光+キー・オペレーション
構造設計:構造設計工房デルタ
設備設計:コモド設備計画
施工:佐藤秀
写真:小川重雄 
敷地面積:154.91m2
建築面積:116.58m2
延床面積:916.03m2

小山光(建築家)

小山光(建築家)

株式会社キー・オペレーション一級建築士事務所代表取締役。英国王立建築家協会会員。1970年東京都生まれ。1994年東京都立大学卒業後、1996年ロンドン大学バートレット校建築修士課程修了、1998年東京工業大学建築学修士課程修了。David Chipperfield Architectsなどの海外設計事務所で働いた後、2005年に株式会社キー・オペレーションを設立。

おもな受賞歴にThe Architizer A+Awards 2022 Firm of the Year Best of Asia 審査委員賞、AR Future Projects Awards 2021 Winner受賞 、RIBA (英国王立建築家協会) 国際賞受賞など。千葉大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師。

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2023/5/24 15:55