不動前の空地

2020 / アスコット

目黒不動尊の小さな商店街に面した敷地に計画された、5階建ての14戸からなる賃貸集合住宅。間口が狭く、奥行きの深い敷地に、小さい賃貸住戸を効率よくレイアウトする際に設計者が頭を悩ませるのは、敷地の奥側の住戸の窓先空地の取り方である。前面道路に面している住戸以外は、隣地に面して窓を設けても、隣接する建物の壁が敷地境界まで迫っているため、採光や通風に効果的な開口をとることができず、あまりいい住環境にならないことが多い。

敷地の奥行きが17mあるので、まず敷地の前後2つのボリュームに分けて、その間に抜けの空間をつくり、そこに各住戸へアプローチする階段を設けた。

また2つのボリュームの四隅を切り欠いて、6か所のヴォイドを設け、各住戸に光を取り入れ、快適な内部環境を生み出している。周辺を敷地際まで建物で囲われた敷地において、特に低層階で隣地側の開口は採光上有効な開口部にできなくなることが多い。建物ボリュームの角を切り落とし、ヴォイドを設けて隣地との離隔を取ることで、ヴォイドに面する開口は、建築基準法の採光上も有効な開口となる。

一般的なワンルーム住戸は、廊下を中央にして、その左右に水回りを設置し、奥にベッドルームがあるパターンが多い。しかしこちらでは、水回りを建物ボリュームの中央に寄せて廊下を壁際にすることで、6つの「窓先空地」をつなぐ抜けを住戸内に生み出している。それにより、前面道路から、敷地の奥まで視線の抜けができ、風の通り道ができる。2人用の1LDK住戸がある奥のボリュームも、水回りを中央に設けて、リビングとベッドルームが玄関やキッチンを通って回遊できる間取りにしている。住戸の開口は「窓先空地」に面する部分だけに設け、抜けの内側にプライバシーを確保している。

敷地:東京都品川区
用途:集合住宅
竣工:2020年8月 
建物名称:TIPETTO目黒不動前
企画開発:株式会社アスコット
設計監理:小山光+キー・オペレーション
構造設計:構造設計工房デルタ
設備設計:コモド設備計画
施工:中島建工
写真:Nacasa & Partners Inc.
敷地面積:155.07m2
建築面積:113.17m2
延床面積:527.68m2

不動前の集合住宅 Tipetto目黒不動前
小山光(建築家)

小山光(建築家)

株式会社キー・オペレーション一級建築士事務所代表取締役。英国王立建築家協会会員。1970年東京都生まれ。1994年東京都立大学卒業後、1996年ロンドン大学バートレット校建築修士課程修了、1998年東京工業大学建築学修士課程修了。David Chipperfield Architectsなどの海外設計事務所で働いた後、2005年に株式会社キー・オペレーションを設立。

おもな受賞歴にThe Architizer A+Awards 2022 Firm of the Year Best of Asia 審査委員賞、AR Future Projects Awards 2021 Winner受賞 、RIBA (英国王立建築家協会) 国際賞受賞など。千葉大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師。

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2023/5/24 15:55