猪名川霊園樹木葬墓所 森の墓園「みまもりの丘」

2022 / 墓園普及会

北摂山系の猪名川霊園は、自然に囲まれた樹木葬墓所であり、その人気は自然への回帰だけでなく、核家族化の進行や墓じまい後の改葬先としての利便性にも起因している。2020年に完成した桜葬墓所は、従来の花壇状の樹木葬墓所よりも自然への回帰を重視し、故人の魂を自然に還す「自然に還るお墓」という提案を行っている。

墓所は猪名川の支流である下北谷川の斜面に位置し、足の不自由な人々の利用も考慮してスイッチバック状の遊歩道が設けられている。斜面には高木やヤマモミジ、ヤマザクラなどが植えられ、隣接する森からの山野草も配置されている。樹木葬墓地は元々、自然環境を保護し後世に残すために始まったものであったが、最近の墓地は人工的な要素が多く見受けられる。

この墓所では、骨壺を使用せずに遺骨を麻布に包み、遊歩道の地中に直接埋葬する「自然に還るお墓」を提案している。遺骨は微生物によって土に変わり、樹木の養分として吸収され、埋葬された人々の魂は自然のサイクルと共生する。この墓所は個人単位で利用できるため、子どものいない夫婦や独身者、墓の世話をしたくない人々の選択肢となっている。

埋葬後は約30年間、遺骨が自然に還り、次の世代の魂を受け入れ、自然の成長を支える養分となる。このような形態は永続的な霊園事業を可能にし、経済的な持続性を持っている。墓所の上部にはコンクリートの東屋があり、そこから埋葬された人々の魂を見守ることができる。また、谷底の集落の風景や森の働きを目にすることも可能だ。

敷地:兵庫県猪名川町
用途:墓地
竣工:2022年4月
設計監理:小山光+キー・オペレーション
構造設計:構造設計工房デルタ
施工:メモリアルアートの大野屋、ビームスコンストラクション
写真:市川靖史、高野友実
敷地面積:692.66m2
建築面積:15.00m2

猪名川霊園樹木自然葬 森の墓園「みまもりの丘」
小山光(建築家)

小山光(建築家)

株式会社キー・オペレーション一級建築士事務所代表取締役。英国王立建築家協会会員。1970年東京都生まれ。1994年東京都立大学卒業後、1996年ロンドン大学バートレット校建築修士課程修了、1998年東京工業大学建築学修士課程修了。David Chipperfield Architectsなどの海外設計事務所で働いた後、2005年に株式会社キー・オペレーションを設立。

おもな受賞歴にThe Architizer A+Awards 2022 Firm of the Year Best of Asia 審査委員賞、AR Future Projects Awards 2021 Winner受賞 、RIBA (英国王立建築家協会) 国際賞受賞など。千葉大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師。

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2023/5/24 15:55