植物を主役に。パークスガーデンの“残して磨く”リニューアルプロジェクト(1)

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植物を主役に。パークスガーデンの“残して磨く”リニューアルプロジェクト(1)
大阪の商業施設「なんばパークス」の屋上公園「パークスガーデン」は、2003年10月に誕生しました。約20年を経て大規模リニューアルが実施され、現在はリニューアルオープンから約2年。植物たちはさらに深く根を張り、季節の移ろいを豊かに表現する成熟のステージを迎えています。

リニューアルのコンセプトは「タッチングネイチャー」。五感すべてで自然に触れ、開業時に掲げた「人、都市、自然がもっと一つになるために、なんばに森をつくる」という想いを継承しながら、さらに深度化した取り組みです。

なんばパークスガーデン

photo:KOUKI HATANO

今回の記事では、リニューアルプロジェクトに携わった株式会社NANKAIの渡辺亮さん(現:株式会社パンジョ)、寺田衣里さん、パークスガーデン事務局の西塙(にしばね)征広さん、大嶋美香さん、株式会社丹青社の万井(まんい)純さん、山崎亜理沙さん、松本彩瑛さんの7名に話をうかがいました。

商業施設の屋上という特殊な空間で、プロフェッショナルたちが注いだ思いが、都市の緑を“生き続ける都心の杜”へと育ててきた軌跡に迫ります。

2003年開業の原点。「まちにも人にも優しい」都市公園の誕生

約11,500m2の段丘状のパークスガーデンには、約500種・10万株を超える多様な植物が息づき、専属ガーデナーが年間365日体制で“魅せる管理”を続けています。

植物を単なる演出ではなく、生き物として、そして生態系として主役に据える――スクラップ&ビルドを極力避け、新たなアプローチで価値を高め、オープン時点を完成とは見なさず、植物が2年、5年、10年と育つ過程でこそ本当の完成に近づく。そんな先を見据えた長期視点が、プロジェクト全体の設計思想の根幹となっています。

――まず、なんばパークス開業の経緯と、パークスガーデンのコンセプトについて教えてください。

渡辺亮さん(以下、渡辺):2003年に開業したなんばパークスは、大阪球場跡地の再開発プロジェクトにおいて、跡地に新たな都市機能を検討したのが始まりです。当時の主流だった箱型の商業ビルを並べる計画ではなく、建物上部に立体的な都市公園を創出するという、とてもチャレンジングな取り組みでした。「まちにも人にも優しい」「ヒューマンスケール」を大切にし、利用者が自然と心地よく過ごせる空間を目指したんです。

<strong>渡辺亮</strong> リニューアル計画当時:南海電気鉄道株式会社 SC営業部 課長/現在:株式会社パンジョ SC事業部 部長

渡辺亮 リニューアル計画当時:南海電気鉄道株式会社 SC営業部 課長/現在:株式会社パンジョ SC事業部 部長

西塙征広さん(以下、西塙):私は当時、実施設計段階から植栽提案として参加しました。植物が持つ多様なポテンシャルを最大限に引き出し、その魅力を来場者に伝えられる施設にしたいという強い思いがありました。

西塙征広(にしばねまさひろ) パークスガーデン事務局/ランドスケーパー

西塙征広 パークスガーデン事務局(現:南海ビルサービス株式会社)/ランドスケーパー

西塙:特に管理面では、これまで商業施設では裏方として隠れて行われることが一般的だった植栽管理を、営業時間内に公開する“魅せる管理”という当時としてはかなり異色の運用で、利用者との自然なコミュニケーションを生み出す「エコール・オブ・アクチュアリティ(現場から学ぶ場)」を意識したものでした。

2003年10月オープン当時のなんばパークスガーデン

第1期オープンから4年後、2007年全館オープン当時のパークスガーデン

渡辺:当時の担当者からは、なんば駅からの距離や駅近くにある他のショッピングモールを考えると、普通の箱型モールでは集客が難しいであろうという観点から、曲線を活かしたデザインや段丘状の立体的な特徴を活かし、「わざわざ足を運びたくなる」施設にしたいという意図があったと聞いています。結果として、この原点となる考え方は20年を経た今も色褪せず、現在のパークスガーデンの基盤となっています。

植物を主役に。コロナ禍で「リアルを磨く」決断

――今回のリニューアルプロジェクトの経緯をお聞かせください。

寺田衣里さん(以下、寺田):2020年頃に始まったコロナ禍は、商業施設にとって本当に厳しい時期でした。人々が外出を自粛し、密を避ける生活が続き、売上は大幅に減少。ネット通販の利用がさらに加速したことで、商業ビジネスのあり方そのものを根本から見直さなければならないタイミングでした。

寺田衣里 リニューアル計画当時:南海電気鉄道株式会社 SC営業部 課長補佐/現在:株式会社NANKAI ブランド&コミュニケーション部 課長補佐

寺田:南海電鉄SC部門では、「リアルを磨き、場の価値を上げる」という明確な目標を改めて設定しました。当社の代表施設であるなんばパークスの中で、特にパークスガーデンは唯一無二の資産だと再認識して、2022年度から本格的にリニューアルプロジェクトを立ち上げました。植物が主役のガーデンを徹底的に磨き上げることで、商業施設に新しい付加価値を生み出そうとしたんです。

渡辺:そこでさまざまな立場の方と意見交換を行う中で、丹青社さんからの「ガーデンの魅力を隅々まで研究し、引き出せていない魅力をしっかり引き出す」という提案内容が強く響きました。当時のチームメンバーからも「これだな」「いい意味で裏切られたね」といういい反応を得ることができました。

山崎亜理沙さん(以下、山崎):最初は、デジタル演出を重視した案も含まれていましたが、途中で根本的な方向転換を図りました。

山崎亜理沙 株式会社丹青社 デザインセンター 関西デザイン局 1部 1グループ チーフデザイナー

山崎:当初の案から全面的にデザインを見直した理由は、私自身の設計思想が大きく変わったからです。リニューアルプロジェクトでは、華やかな目玉装置を新設するという手法を用いることが多くあります。

しかし、植物は生き物であり、命を持っています。パークスガーデン事務局が実施しているガーデンツアーに参加したことがきっかけに、花壇を壊して目玉装置を作るような手法は、植物の命を奪う行為につながるのではないかと強く感じるようになりました。ガーデナーさんたちから、庭の花や木々への愛情や思いを直接聞く中で、「今の自分の設計でいいのか……」と感じたので、計画を全面的に見直ししました。

ジョン・ジャーディが設計したガーデンを活かしつつ、より自然と人の距離を近づけた設計に

開業当時から育まれてきたガーデンを活かしつつ、より自然と人の距離を近づけた設計に

山崎:開業当時から持っていたパークスガーデンの魅力を磨き直して、アップデートしていく。パーゴラ(庭などで柱に格子状の屋根を乗せた外廊下)のような大型装置を入れるために土を壊す案も見直して、「壊すのではなく、残して生かす」方向へとシフトしました。時の流れによって変化する空間の価値を感じられるような導線に再構築しています。

一方で、維持管理のためには一部を変更しなければならない部分もあるという現実も学び、バランスの難しさを改めて痛感しました。ただ、植物が主役という核心を関係者三者で深く共有して、良い所をみつけて本質的な魅力をもう1度探す「魅力探し」をみんなで行ったことがこのプロジェクト最大の成果だと思います。

――今回のリニューアル「タッチングネイチャー」というコンセプトはどのように生まれたのですか?

渡辺:実は自然発生的に生まれた言葉だったんです。みんなでブレストを重ねる中で、五感で自然に触れる体験の再定義として全員が納得した表現でした。触れるだけでなく、見る・聴く・香る・感じるなど、すべての感覚を活用するコンセプトとして「タッチングネイチャー」は最適だと考えました。

万井純さん(以下、万井):今回のリニューアルでは、都市の空と緑の景観をただ鑑賞する場から、植物と人が時間と空間を共有できるように「全身で緑の没入感を感じる」「心地よい風を感じながら食事する」「緑の中で働く」「寝ころんで空の移ろいを眺める」など、それぞれの場所で、あらゆるお客さまが自分らしく思い思いに過ごすことができる場を創出しました。

万井純 株式会社丹青社 デザインセンター 商空間デザイン局 シニアクリエイティブエキスパート

山崎:特定のゴール地点を設けず、どの階層・エリアでも自然を感じる設計にしています。各エリアの特徴・機能に、よりメリハリを持たせストーリー性を付加することで、過ごし方・遊び方の幅を広げ、これまで以上に巡る楽しさを創出しています。

左上:8F GREEN STAGE、右上:7F Red canyon ―赤の大地―、右下:6F 緑と食のガーデンテラス、左下:7F GREEN DESK for worker

左上:8F GREEN STAGE、右上:7F Red canyon ―赤の大地―、右下:6F 緑と食のガーデンテラス、左下:7F GREEN DESK for worker photo:KOUKI HATANO

西塙:リニューアルプロジェクトでNANKAIさんが目指しているもの、そこに丹青社さんが作り上げていくものがあって、パークスガーデンに新しい要素を取り入れる分岐点になったのかなと思います。私は植物の色彩デザインを提案するにあたって、一般的な植物ではダメだと正直感じました。本当にエッジの効いた色彩デザインにすることで、ポジティブな意味で“裏切らせる”ような見せ方は大事に考えました。

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