Robot shelf

2019~

この彫刻的な棚「Robot Shelf」は、ロボットと人間、男性性と女性性、生と死、家庭用収納とアートクラフトといった、相反する要素をひとつのかたちに統合しようとする試みとして制作されました。

私たちは「棚は、その上に置かれたものを通じて持ち主の個性を映し出す存在である」と考え、この棚にも独自の人格が宿るような存在感を与えたいと思いました。頭から足先まで、顔や胸、性器、手など人間の身体的特徴が随所に表現されており、ある角度からはロボットのように見え、また別の角度からは抽象化された人物像として浮かび上がります。線的な描写と立体的なフォルムの組み合わせによって、視点に応じて印象が変化する構造です。

収納部分はあえて小さく設計されており、日用品をしまうというよりも、使い手がこれまでの人生で集めてきた小さなものを飾りながら、自身のパーソナリティや想いを棚に投影していくような感覚をイメージしています。

素材には赤杉を使用。滑らかになるまで丁寧に削り、自然な風合いを活かすため、無塗装で仕上げています。全体のかたちはあらかじめ緻密に設計されたものではなく、木材との対話を重ねながら即興的に構築されました。顔や手などのディテールは、彫刻作品と同様に、一つひとつ手作業で丹念に彫り出されています。

写真:James Harris

リオ コバヤシ(デザイナー・作家)

リオ コバヤシ(デザイナー・作家)

イギリスを拠点に活動するデザイナー兼作家。陶芸家と修復家の両親のもと、日本とヨーロッパの文化が入り混じる家庭に育ち、コンセプチュアルな探究心とクラフトマンシップへの深いこだわりを融合させた作品を手がけている。栃木県で生まれ、幼少期に初めて家具を制作。18歳でオーストリアに渡り、3年間の家具職人修行を通じて、多文化的な視点と確かな技術を培った。

その後、ベルリン、ミラノ、東京、パリなどでのコラボレーションを重ね、2017年にイースト・ロンドンに自身の工房を設立。素材、物語性、フォルムの対話を軸に制作を続けている。これまでにロンドン・デザイン・フェスティバル、ミラノ・デザインウィーク、デザイン・マイアミをはじめ、さまざまなギャラリーで作品を発表。『フィナンシャル・タイムズ』『ウォールペーパー』『ワールド・オブ・インテリア』『フォーブス』などのメディアにも取り上げられている。

http://riokobayashi.com/

2025/5/30 12:00