Leibzieger Komplex Berlin

2023

ベルリンの1970年代を象徴する社会住宅「Der Komplex Leipziger Straße」にある住居を舞台に、当時の時代感を反映した大胆な色使いと洗練されたディテールを融合させたインテリアデザインを施しました。

このプロジェクトは、長年の友人である韓国系アメリカ人アーティスト、クリスティーン・スン・キムとドイツ・バイエルン地方出身の夫、その家族のために手掛けた初のインテリアデザイン案件となります。

限られた空間を最大限に活用するため、壁一面に大容量の収納キャビネットを設けることで独立した寝室をつくり、空間の使い勝手を向上させました。引き戸には伝統的な障子を用い、韓国の伝統的な意匠とバイエルン地方の旗をモチーフにした模様を繊細に施しています。素材には無垢の桜材を選び、使い込むほどに深みが増す風合いを大切にしました。

また、遊び心を取り入れたデザインとして、床には韓国、アメリカ、ヨーロッパの硬貨を透明な樹脂に封入し、多文化的な背景を象徴的に表現しています。さらに、クリスティーンは耳が聞こえないため、寝室を仕切る障子の引き戸には、リビング側から戸を開けずに室内を確認できるよう一部をフリップ式に設計。機能性と遊び心が融合した工夫です。

制作は冬の厳しい季節にヘルシンキで行われ、Onni Anoとともに約2ヶ月半にわたり、家具の製作から仕上げまで丁寧に進められました。時代の空気感と現代的な機能性を兼ね備えた、温かみのある住まいが完成しました。

写真:Min Lee

リオ コバヤシ(デザイナー・作家)

リオ コバヤシ(デザイナー・作家)

イギリスを拠点に活動するデザイナー兼作家。陶芸家と修復家の両親のもと、日本とヨーロッパの文化が入り混じる家庭に育ち、コンセプチュアルな探究心とクラフトマンシップへの深いこだわりを融合させた作品を手がけている。栃木県で生まれ、幼少期に初めて家具を制作。18歳でオーストリアに渡り、3年間の家具職人修行を通じて、多文化的な視点と確かな技術を培った。

その後、ベルリン、ミラノ、東京、パリなどでのコラボレーションを重ね、2017年にイースト・ロンドンに自身の工房を設立。素材、物語性、フォルムの対話を軸に制作を続けている。これまでにロンドン・デザイン・フェスティバル、ミラノ・デザインウィーク、デザイン・マイアミをはじめ、さまざまなギャラリーで作品を発表。『フィナンシャル・タイムズ』『ウォールペーパー』『ワールド・オブ・インテリア』『フォーブス』などのメディアにも取り上げられている。

http://riokobayashi.com/

2025/5/30 12:00