「Because it matters(大切なコト、価値あるモノ)」をモットーに、液晶モニターやプロジェクターなどの商品を手がけるメーカー「BenQ(ベンキュー)」。2025年4月に発売された「PD2730S」は、BenQ初の5K解像度を実現した、デザイン業務に最適な27型モニターだ。
広い色域と高い色精度であらゆる制作過程においてデザイナーの期待に応えるほか、キャリブレーションやMacの色味を再現する便利な機能が加わり、生産性向上もサポートしてくれる。
今回は、ビジュアルデザインスタジオ「WOW」に所属するビジュアルデザイナーの塚島建さんに、「PD2730S」を一定期間使用いただいた。最近手がけた仕事や作品への向き合い方とともに、魅力や使用感などをうかがった。
研究者からFXアーティストへ。海外で技術を磨き、WOWに参画
――塚島さんの現在までの経歴をお聞かせください。
大学時代は、慶応義塾大学のシステムデザイン工学科でシミュレーション研究に取り組んでいました。映像やデザインをしている人が周りにいない環境だったのですが、とあるきっかけで3DCGと出会い、手を動かしてモノをつくる面白さに惹かれていったんです。いつしか「ハリウッド映画に挑戦してみたい!」と思うようになり、大学卒業と同時にカナダ・バンクーバーへ留学。VFXを学ぶ専門学校で、1年間3DCGをじっくり学びました。
専門学校卒業後は現地のbeloFXという映像会社に就職し、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』など大きな映画タイトルの制作にも参加。FXアーティストとして海中の泡やパーティクルといったエフェクト要素を担当しました。エンドクレジットにも名前が載っているので、ぜひ探してもらえたら嬉しいです(笑)。

塚島建 WOW ビジュアルデザイナー
――海外でキャリアを積んだ後、2023年にWOWに入社されたそうですね。入社を決めた理由は何ですか?
海外では、映画ワンカットのなかでもひとつの要素だけを担当する分業制なので、自分1人でできる範囲がどうしても限られていたんです。そこから「もっと広く作品に携わりたい!」という思いが募り、日本の会社を調べるようになりました。
なかでもWOWは、オリジナル作品に力を入れている会社です。また、コミッションワークでも提案資料の作成からクライアントへのプレゼンテーション、コンセプト決めまで、デザイナーが上流から関われる環境に惹かれて入社を決めました。
手編みの「温かさ」と、素材の「美しさ」をCGで表現
――WOWは、ビジュアルデザインスタジオとして映像だけでなく、空間やUI/UXなど幅広いデザインワークを手がけています。改めてどんな会社なのでしょうか。
視覚表現を通して、見た人にどんなメッセージを伝えるのか、どういう気持ちになってもらうかという部分を追求し続けている会社だと思います。軸にあるのは映像ですが、インスタレーションやユーザーインターフェースなど、さまざまな表現方法を取り入れながら人々の心を揺さぶるものを作り上げていく。そこがWOWの魅力だと思います。
――WOWで塚島さんが手がけたお仕事をいくつか教えてください。
まず紹介したいのは、アンテプリマのシグネチャーアイテムである「ワイヤーバッグ」のブランドムービーです。このバッグは、ワイヤーコードを熟練の職人が一つひとつ手で編み上げているアイコニックなアイテム。バッグのシルエットから編み目の細部まで、すべてCGで再現しています。
――クライアントからはどのようなリクエストがあったのでしょうか?
「手編みの温かさ」と「素材の美しさ」を大切にしてほしいという要望がありました。このバッグが手編みでつくられていることを知らないお客様も多いということで、その製法とこだわりが自然と伝わるような映像にしようと考えました。制作にあたっては、実際に職人さんが手編みする様子や実物のバッグを観察し、どのように編みこまれているのかを紐解くところから始めました。
また、ワイヤーも光沢があって本当に綺麗なんですよね。その素材の美しさを伝えるために、色味や透明感といった質感には何よりこだわりました。

――制作で一番難しかった部分はありますか?
やはり、編み込みの再現ですね。編み込み部分は、基本的に編み目のCGを作り、それをリピートさせる形で制作しています。しかし、取手やバッグ本体、エッジ部分でそれぞれ縫い方が異なるため、同じパターンをただ並べるだけでは実物を再現できません。かといって均一に整えすぎると、今度は手編みならではのランダムな温かみが失われてしまいます。
実際の製品をとことん観察しながら、自然なニュアンスが出るよう細かく調整していきました。難しい作業ではありましたが、温かみを感じられる点や再現度を評価していただけたときはうれしかったですね。
広島の街並みをミニチュア風に再現。細部の作り込みがリアルな質感をもたらす
――ほかにも、印象に残っているお仕事を教えてください。
日本全国の3D都市モデルをオープンデータとして提供している、国土交通省主導のプロジェクト「PLATEAU」を活用した映像作品です。依頼内容は「PLATEAU」を活用して映像を作り、その制作過程をチュートリアル動画としてまとめてほしいというものでした。細かな条件はなかったため、どの都市を舞台に、どのような映像をつくるかという点から考えて制作を進めました。
今回私が選んだのは、広島の街並みです。もみじ饅頭やレモン、牡蠣、鯉といった広島ゆかりのモチーフを多数登場させながら、ミニチュア風の映像に仕立てました。
――数ある3D都市モデルの中から、なぜ広島を選んだのでしょうか?
「PLATEAU」のデータを確認していた時に、広島は緑が多く、ミニチュア風に表現するのに最適だと思いました。ただ、公開しているモデルは細かなディテールまで描き込まれていないんですよね。そのため、実際に現地で入れ込みたいモチーフを3Dスキャンカメラで撮影したり、「Google Earth」で現地の様子を見たりしながら、建物の窓や室外機、車に電車、道路の白線など細かな部分を付け加えていきました。まさにミニチュア模型を組み立てるような作業で、大変ではありましたね(笑)。
途中で出てくる牡蠣についても、通販で取り寄せたものを観察しながらつくっています。牡蠣のように、多くの人が目にしたことがあるものは本格的に作り込まないとリアルに見えないんですよね……。だからこそ動きや質感をリアルに再現できた時は、CGの面白さを感じます。

質感がリアルすぎる牡蠣
――キャラクターやストーリーも可愛らしくて印象的ですよね。過去にも3DCGアニメーションを手がけたことはあるのでしょうか?
ほぼ経験がなかったんです。それまでの案件ではモーショングラフィックス的でシンプルなものが中心だったので、今回のキャラクターアニメーションは挑戦でもありました。私はいつも「今回はどんなことに挑戦しようか」と考えながら制作を進めるよう心がけています。ジャンルを問わず、多様な表現に挑戦し続けることが一番の興味であり、原動力でもあるんです。
色と質感を徹底的に追求できる、プロフェッショナルユースなモニター
――普段のお仕事ではどのようなツールを使っていますか?
マウスとキーボード、モニターに加えて、カラーパネルも使っています。カラーパネルはCGの明るさや色味を細かく調整するためのもので、ボールでカラーを、ノブでコントラストを調整できます。一般的な3DCGの現場ではあまり使われていないと思いますが、こういったデバイスがあると細かい部分を調整しやすいんです。

塚島さんが普段使用しているカラーパネル
――ご紹介いただいたお仕事も、色や質感など、細部への徹底的なこだわりを感じました。
そうですね。同じCG素材があったとしても、色の調整や明暗のコントロール次第で見え方が大きく変わるので、CGの編集作業における細部の表現には特にこだわっています。だからこそ、モニターの色の再現度や明るさはとても重要です。信頼できるモニターかどうかで、最終的な仕上がりに関わってくると思います。
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