第309回 リオ コバヤシ (デザイナー・作家)

[we+の推薦文]

海外を拠点に活躍する日本人デザイナーは多いが、その中でもリオ コバヤシさんは一際異彩を放つ存在だ。日本とオーストリアにルーツを持つ彼の作品には、東洋と西洋の要素が複雑に織り交ぜられ、どこか夢の中にいるような、不思議な浮遊感が漂う。

家具制作の修行で培われた端正な木工技術と確かなクオリティが土台にあるからこそ、ビビッドな色彩や、大胆な素材のコンポジションによる鮮やかな裏切りが心地よい。クラフトとデザイン、西洋と東洋。多層的な次元を行き来しながら、旅人のように軽やかに遊ぶその世界は、いまなお広がり続けている。日本でも、彼の作品をより多く目にする機会が増えるとうれしい。

we+(コンテンポラリーデザインスタジオ)

リサーチと実験に⽴脚した独⾃の制作・表現⼿法で、新たな視点と価値をかたちにするコンテンポラリーデザインスタジオ。林登志也と安藤北⽃により2013年に設⽴。日々の研究から生まれた自主プロジェクトを国内外で発表しており、そこから得られた知見を生かした、R&Dやインスタレーション等のコミッションワーク、プロダクト開発、空間デザイン、アートディレクションなど、さまざまな企業や組織のプロジェクトを手がける。FRAME Awards、Wallpaper* Design Awards, Dezeen Awards、ELLE DECO International Design Awards等受賞多数。作品はドイツのVitra Design Museumなどに収蔵されている。

http://www.weplus.jp

編集部からの推薦文
伝統と革新を巧みに融合させた独自のデザインで、国内外から注目を集めるリオ・コバヤシさん。今回、彼のこれまでの作品を通して、強く感じられたのは“遊び心”と“物語性”だった。

たとえば「Nancy’s Table」では、依頼主の祖母・ナンシーが使っていた裁縫箱をテーブルとして再構築。依頼主との丁寧な対話を重ねながら、彼女の夢がそっと花開くような仕掛けを盛り込んでいる。また、テーブルの脚の一本には緑色のネイルポリッシュが塗られており、細部にまで遊び心が宿る。

リオさんの作品には、受け継がれてきた物語への敬意と、子どものように柔らかく自由な発想が同居している。その感性と姿勢に、これからもますます目が離せない。
リオ コバヤシ(デザイナー・作家)

リオ コバヤシ(デザイナー・作家)

イギリスを拠点に活動するデザイナー兼作家。陶芸家と修復家の両親のもと、日本とヨーロッパの文化が入り混じる家庭に育ち、コンセプチュアルな探究心とクラフトマンシップへの深いこだわりを融合させた作品を手がけている。栃木県で生まれ、幼少期に初めて家具を制作。18歳でオーストリアに渡り、3年間の家具職人修行を通じて、多文化的な視点と確かな技術を培った。

その後、ベルリン、ミラノ、東京、パリなどでのコラボレーションを重ね、2017年にイースト・ロンドンに自身の工房を設立。素材、物語性、フォルムの対話を軸に制作を続けている。これまでにロンドン・デザイン・フェスティバル、ミラノ・デザインウィーク、デザイン・マイアミをはじめ、さまざまなギャラリーで作品を発表。『フィナンシャル・タイムズ』『ウォールペーパー』『ワールド・オブ・インテリア』『フォーブス』などのメディアにも取り上げられている。

http://riokobayashi.com/