COOKTOWN

2020

「motif」

安西水丸さんの絵を飾りたい、というのが施主の要望の一つだった。テーブルと背景とアイコニックな小物たち、どこか家のリビングのワンシーンのような印象など、安西水丸さんのイラストから受ける印象はさまざまあるが、そのはっきりとした形や線と色使いから感じる現実からの心地よい違和感が僕も好きだった。

富山市内の飲食店はだいたい1階にあるから2階のお店は難しい、と富山の友人から言われ、このお店の場所が富山の中心街から離れた交差点角地の2階にあることに心配する声もあった。店名の「COOKTOWN」という名前は店主が自らつけたもので、昔からそこにあった街の定食屋のような少し郷愁のある響きが気に入り、このお店がこれからそうなっていってほしいと思いつけた名前らしい。安西水丸や店名は設計をする上でのモチーフとなり、僕はと言えば、ドアらしいドア、ランプらしいランプ、少し大きなテーブルなど、家のリビングのアイコン的なそれらの存在を、数や形や大きさを強調することで少しの違和感を生じさせようと計画した。

お昼時、富山の町外れの2階に続く階段に人が並ぶ光景がうまれた。

写真:林悠介

湯浅良介(建築家)

湯浅良介(建築家)

1982年東京都生まれ。Office Yuasa主宰。一級建築士、修士(美術)。2010年東京藝術大学大学院修士課程修了。内藤廣建築設計事務所を経て、2018年よりOffice Yuasaを主宰。2019年から東京藝術大学教育研究助手、2022年から多摩美術大学非常勤講師。おもな受賞歴に東京藝術大学吉田五十八修了制作賞受賞、東京建築コレクション内藤廣賞受賞など。

https://www.yuasaryosuke.com/
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2022/11/9 11:50