編集部の「そういえば、」―建築の技術がプロダクトになった「旅する家具」

編集部の「そういえば、」―建築の技術がプロダクトになった「旅する家具」

そういえば、建築出身のメンバーが立ち上げたKNOTTER(ナラー)株式会社のラボにお邪魔しました。同社は、「2025年大阪・関西万博」のフィリピンパビリオン内の展示什器も手がけたチームです。

ラボでは、同社が展開するブランド「旅する家具」の初の製品である、ベッドフレーム「RAFT(いかだ)」とサイドテーブル「BEACON(灯台)」を拝見しました。

旅する家具

「旅する家具」イメージビジュアル

「旅する家具」は、市場に流通しない木材を活用した家具シリーズ。日本建築の伝統構法である「継手・仕口」と現代のプレカット生産技術を融合させ、釘や接着剤、さらには工具さえ使わずに組み立てや解体ができるのが特徴です。

「旅する家具」のベッドフレーム「RAFT」

「旅する家具」のベッドフレーム「RAFT」

一般的な家具は、木材にネジを直接打ち込んで固定するため、一度解体するとネジ穴が傷み、再度組み立てるのが難しい場合があります。

でも「RAFT」は、接合部に金属のネジを使わず、継手や仕口によって木材同士を組み合わせ、ナイロンバンドで全体を締めて固定する独自の構造を採用しています。木材を傷めないため、何度でも解体と組み立てが可能で、引っ越しの際もコンパクトに梱包し、通常の宅配便で手軽に配送できるそうです。

継手・仕口の部分

継手・仕口の部分

ラボでは実際に組み立てを体験させてもらいました。個人的には、仕口が施された木材を自分の手で組み立てるというのはなかなか体験したことがなかったので、テンションが上がるポイントでした。さらに、大人1人でも10〜20分程度で簡単に組み立てられるというのも驚きです。

組み立ての様子

組み立ての様子

また興味深いのが、彼らが「遊休木材」と呼ぶ素材です。「RAFT」には、節が多いなどの理由で建築現場では敬遠され、チップ燃料や下地材として扱われてきた「C材」などの国産針葉樹が使われています。これまで欠点とされてきた節を、個性としてあえてデザインの表に引き出している点も印象的でした。

ベッドに個性を生み出す「節」

ベッドに個性を生み出す「節」

一方、「BEACON」は、樹齢80年クラスの大径木から削り出されたサイドテーブルです。大きすぎるがゆえに使われていなかった丸太を活用しており、木材のひび割れを防ぐための伝統的な加工「背割」を、スマートフォンの充電ケーブルや照明の配線をすっきりと収める溝として活かしています。ベッドサイドは意外と配線が雑然としがちですが、それをスッキリさせてくれる工夫には思わず唸りました……!

「BEACON」

「BEACON」

さらに「旅する家具」は、不要になった際に同社が無料で回収し、手直しを行った上で次の使い手へとつなぐ循環型の仕組みを採用しています。引っ越しの際、家具の解体や運搬の手間から粗大ゴミとして手放し、新しいものを買い直した経験がある人も多いのではないでしょうか。ライフスタイルの変化とともに繰り返される「家具の短命化」という課題に対し、木材の流通や社会の循環までを含めてデザインしています。

建築家集団だからこそできる構造への深い理解と、大きなスケールで扱われてきた建築の技術が、暮らしに寄り添う小さなかたちへと置き換えられた感じがありました。今回紹介した製品に加え、彼らの今後の活動にもぜひご注目ください!

KNOTTER(ナラー)株式会社 oオフィス

(岩渕真理子)