「光景と情景」
東京都江東区にある、LIXIL自社ビル内に設置された期間限定のブランドコンセプトルーム。
展示される製品はサッシやトップライトなど、内外の境界に設置されるものだったことから、コンセプトルーム内に擬似的な「外の景色」をつくり出し、実際に製品が設置される環境を擬似体験できる場を計画した。外の景色のように見える、あるいは感じるさせる要素とは何か、それは地球の輪郭である水平線・地平線が見えることだと考えた。
また、製品を展示する部屋の壁とは関係なく、サッシより外側にある壁すべてに水平なラインが見えることで、壁の存在よりも景色としての認識が強まると考えた。そのために水平線のラインとなる明暗の境界線を人のアイレベルに設定し、この空間を訪れた人が立って製品を見たとき、部屋の奥壁と側壁の形状とは関係なく、視界の端から端まで水平線が通るよう計画した。水平線となる明暗の境に若干滲むような影を生じさせることが、遠くの景色である水平線らしさをより醸し出す効果となっている。
窓の外にある明暗の境界、という状態に人は自ずと見覚えのある景色を結びつけ知覚する。そのきっかけとなる明暗はただの照明の光と影であり、つくり出したものは偽物の景色だが、脳内につくり出された光景は真偽のない情景である。
写真:Nacasa&Partners
パース:湯浅良介(7、8枚目)