Shadow In Motion

2019 / 台南市

2019年に台湾・台南市の中心部に新しくオープンした台南市美術館の、既存改修の地下駐車場と地上を結ぶ階段の境界に設置されたアートインスタレーション。

地下空間に導かれる自然光を特殊な配列のルーバーによってフィルターすることで、刻一刻と変化する光を、駐車場空間ならではの動的な視覚体験へと翻訳することを意図しました。グラフィックデザイナーの原研哉氏とnoizのコラボレーションによる、四次元のグラフィックデザインの試みでもあります。

楕円形の階段吹抜を縁取るように短冊状のアルミの薄板を3層に並べ、個々の短冊の回転角が連続的に変化する配置としています。層ごとに回転の位相や周期に微妙に変化をつけることで、インスタレーション自体が光の反射の向きや部分ごとの光量を調整する光学装置となると同時に、モアレ効果と楕円独特の曲率変化による動的な視覚効果を楽しむ装置となるように計画しています。

地下駐車場は車と歩行者が共存する独特の空間。視点移動の速度や経路に応じて、多様な角度のルーバーによって生じる干渉縞の揺らぎや乱反射される自然光の分布は、天候や時間、観察者をパラメーターとしながら常に異なる表情を見せます。装置自体はあくまで静的な構成としながらも、周辺の環境や観察者の変化による独特な陰影のうつろいをダイナミックに、かつインタラクティブに体験することができます。

設計においては、既存躯体の施工精度の低さや正確な施工図が存在しない状況に対し、躯体の3Dレーザースキャンを行うことで、全方位に1mm以下の精度で正確に形状データを取得して計画を行いました。ベースとなる既存躯体データが正確であることが前提となってはじめて、光学的な精度でのルーバーの位置や回転角のパラメトリックな調整、レーザーカッターによる厳密な施工精度の適用を、短工期かつ現実的な工程に落とし込むことが可能となりました。また、設計にはゲームエンジンによるリアルタイム・ビジュアライゼーションを全面的に活用し、静的なレンダリングでは得られない、移動や光源の変化に応じた動的な視覚効果の検証を行いました。

コラボレーター:原研哉
写真:Kyle Yu

noiz(建築・デザイン事務所)

noiz(建築・デザイン事務所)

2007年に豊田啓介(左)と蔡佳萱(中央)のパートナーシップとして設立。 2016年より酒井康介(右)を加えた3名パートナー体制で、東京、台北、ワルシャワ(ヨーロッパ)からコンピューテーショナルな手法を駆使し、建築を軸にインスタレーションから都市まで幅広いジャンルで国際的に活動する建築・デザイン事務所。最新のデジタル技術を駆使した各種デザインや製作、システムの実装から教育、各種リサーチ&コンサルティング活動も積極的に展開している。

https://noizarchitects.com/

2020/12/9 12:35