東京都内の住宅地に計画された、夫婦と子供2人のための住宅。積み木のように組まれたボリュームを斜線制限の最大限の大きさの家形で切り取り、その残余としてのボックスとすき間によって構成されている家です。
素材や仕上げの異なる寝室や水回りのボックスを積み木状に重ね、その残りの部分をリビング・ワークスペース・屋根裏部屋が吹抜けでつながるパブリックスペースとしています。リビングは寝室に開けられた窓から見れば外側になりますが、掃き出し窓越しにつながる屋外デッキに対しては内側となるというように、空間の相対的な関係性を常に変化させ、生活空間に面積以上の奥行きが感じられるようにしています。
このプロジェクトでは、3D制作プラットフォーム「Unreal engine」によるリアルタイムレンダリングを設計段階で取り入れ、素材検討やクライアントとの打ち合せに活用しました。また、コンピューター上の空間を、次元を落とした現実空間の写像として見るのではなく、現実に再現すべきものとして見ることで、従来とは異なる設計アプローチを試みています。
テクスチャマッピングされた厚みがないコンピューター上の表現は、角で素材が切り替わるディテール、クリアランスゼロで交わる端部処理によって追及され、結果として物質性が消失した浮遊感のある空間をつくり出すことを可能にしています。バーチャルな表現を徹底することで、対比的に何気ない生活の風景や自然の移り変わりが浮かび上がる家にしたいと考えました。
構造計画:坪井宏嗣構造事務所
施工:桃山建設株式会社
家具提供:Vitra
写真:高木康広