第322回 micelle ltd. (設計事務所)

[高橋美礼の推薦文]

理論的で実践的、頭脳派で行動派。片田友樹さんには、そんな相対するような個性の均衡を感じる。個人邸でも商業施設の内装設計でも、土地や場がもつ条件を魅力に変えながら新しい様相を提示するデザイン設計によって、心地よい感動を与える空気感まで生み出してきた。綿密に計算された細部と挑戦的な素材の使い方は、いつも新鮮だ。

活動拠点とする神戸のオフィスを訪問した時、いちばん印象に残ったのは秘密基地のような作業空間だった。片田さんのパートナーでありマーチャンダイザーとしても活躍する山上祐子さんのギャラリー「OBG eu.」の真ん中を仕切った小部屋が、簡単な家具が制作できるほど専門的な道具で満たされ、完璧な換気システムによって完全に独立した工房になっている。

さまざまな素材を実験的に扱いながら構想し、時には実際に使用可能なレベルのものを完成させる。片田さんのバランスの良さは、これからさらに多方面で発揮されるに違いない。

高橋美礼(デザインジャーナリスト)

ミラノ・ドムスアカデミーにてマスターデザインコース修了後、フリーランスとして多領域のデザインにかかわりながら国内外のデザインを考察し、書籍や雑誌、ウェブ媒体での執筆、編集をおこなう。多摩美術大学芸術学科非常勤講師、法政大学デザイン工学部兼任講師。

https://www.instagram.com/mireissue/

編集部からの推薦文
サテライトオフィスやホテル、セレクトショップ、ラーメン店など、バリエーションあふれる9事例を紹介していただいたが、すでにある状況や一見ネガティブな条件を観察によって紐解き、要素を過剰に整えすぎないおおらかな調和へと再構成しているように感じた。

ただ綺麗なものをつくるのではなく、「時間・素材・人間の活動が交差する場」として空間を捉えている片田さんの今後の活動が大いに楽しみだ。
micelle ltd.(設計事務所)

micelle ltd.(設計事務所)

神戸、岐阜、東京、福岡を拠点に、住宅・商業・ホテル・神社・プロダクトなど「設計」を通して、規模や用途を横断したプロジェクトに関わる。また、国内外の作家によるアートや器を扱うギャラリー「OBG eu.」、岐阜市内に残る祖父母の商店を改修したアーティスト・イン・レジデンス「Fablic House」など、空間とオブジェクトに関する活動を展開する。

https://micelle.jp/

片田友樹
1984年岐阜県生まれ、和歌山育ち。東京大学大学院修了。スキーマ建築計画、ケース・リアルを経て、2017年 micelle ltd.主宰。近畿大学建築学部非常勤講師。

2026/8/25 14:45