デザインの手法や発想法、思考法を身に付けることが、あらゆるビジネスの現場で役に立つ—そういった声が徐々に広がりを見せつつあります。では、実際にデザイン研修やスクールはどのような背景のもとに導入され、企業の課題解決や人材育成をサポートしてきたのでしょうか?企業向けのデザイン研修において豊富な実績を持つ6社に取材しました。
前編では株式会社OFFICE HALO、株式会社コンセント、トリニティ株式会社の3社の取り組みをご紹介。各社ともデザイナーに限らず、商品開発や経営企画といったさまざまな領域の人々を対象に企業研修を行っています。
実際の利用者の声も交えながら、企業が抱える課題感やそれらをサポートするサービスの特徴についてうかがいました。
WEデザインスクール/株式会社OFFICE HALO

(以下、株式会社OFFICE HALO 滝澤幸子さん回答)
■受講する企業・ビジネスパーソンが抱える課題や悩み
当スクールを受講される方は、「デザインを好き嫌いや感覚で判断してしまう」「デザイナーへの発注やコミュニケーションが上手くできない」「新規事業や新製品・サービス開発でいいアイデアが出ない」といった課題を抱えているケースが多く見られます。
広報、マーケティング、商品開発、経営企画など、デザインを専門としない立場の方でも意思決定を担う機会は多くあります。しかし、知識や経験がなく判断軸がないために、好みの問題だと誤解してしまうのです。そうして主観で議論するなど理論的な意思決定がなされなかったり、デザイナーとの協業がスムーズに進まなかったりすることがあります。結果、狙いどおりの成果につながるアウトプットを生み出せないことが多くの企業の課題となっています。
■サービスの特徴・強み、身につくスキル
WEデザインスクールは、「デザイン判断力」を高めることに特化した唯一無二の企業向け研修を行っています。発想法や制作スキルではなく、「なぜこのデザインが良いのか」を言語化し、判断できる力を養います。

研修では、色・文字・かたちといった視覚言語の基礎知識に加え、独自開発の「デザイン観察フレームワーク」を用いて、デザインを明確に分析・言語化する力を身につけます。また、武蔵野美術大学との共同開校をルーツとし、アカデミックな教育の方法論をビジネス向けに再構成した「美大式プログラム」であることも、多くの企業に選ばれている理由の一つです。
こうした学びが、デザイナーとの協業や、デザインの意思決定の精度向上などに活かされています。
■受講生の声
印象に残っているのは、「デザインはセンスではなく、学べるものだと初めて実感した」という声です。受講前は「デザインはデザイナーに任せるもの」「自分には判断できない」と感じていた方が、受講後には「なぜ良いデザインなのかを言語化できるようになった」「デザイナーとの打ち合わせで、根拠を持って議論できるようになった」と話してくださることが多くあります。
また、企業のご担当者からは、「社内でデザインを感覚ではなく共通言語で議論できるようになり、意思決定がスムーズになった」という声もいただいています。組織全体のデザインに関わるコミュニケーションや意思決定の質の向上につながっていることを実感しています。
https://wedesignschool.com
CONCENT DESIGN DOJO/株式会社コンセント

(以下、株式会社コンセント 成瀬有莉さん回答)
■受講する企業・ビジネスパーソンが抱える課題や悩み
ご相談で多いのは、「自社の商品やサービスの開発に、もっとユーザー視点を取り入れたい」「イノベーション創出につながるマインドセットやスキルセットを持った人材を育てたい」「デザインの考え方やアプローチ、その重要性を組織に浸透させたい」といった課題です。
また共通しているのは、スキルの習得をしたいという課題の背景に、学んだことを活用できる社内プロセス・環境づくりや、デザイン導入による成果への納得づくりといったニーズがあること。その根底には、学びを一過性のものにせず、実践を通じて定着させ、組織としての成果へどのようにつなげていくかという課題があると捉えています。
■サービスの特徴・強み、身につくスキル
CONCENT DESIGN DOJOは、「まずやってみる」を軸にしたアウトプット重視の学びが特徴です。座学で理解したつもりになるのではなく、まずは自分の手を動かして試すことを重視したオーダーメイドのプログラムを提供しています。うまくいかない経験も含めて受講者自身の気付きに変えることで、研修の場だけでなく実務に戻ってからも応用が効くような、自分ごと化された学びの場づくりが強みです。
AIによって誰もが「もっともらしい」答えを出せる時代だからこそ、実践を通じて得られる知識や気付きが、これまで以上に重要になっています。

また、UXデザインやデザイン思考といった専門スキルだけでなく、基盤となる「自分で問いを立て、柔軟に試し、やりぬく」というマインドを引き出し、自律的に問題解決に取り組める人材の育成を目指しています。
■受講生の声
ある研修参加者からは、「実物を作ってみることで新しい視点やアイデアが生まれた。頭の中で考えていることよりも多くの気付きを得られた」という声をいただきました。手を動かしながら考え、試すことの価値を実感いただけた一言だと感じています。
また、研修プログラムを取り入れられた別企業のご担当者からは「顧客視点で考えることで、期待以上に革新的なアイデアを浮かび上がらせることができた」という声もいただいています。研修が単なる知識習得で終わらず、現場での課題解決につながっていると実感いただけたようでした。
https://www.concentinc.jp/solution/design-dojo
DXDキャンプ、他/トリニティ株式会社

(以下、トリニティ株式会社 ご担当者回答)
■受講する企業・ビジネスパーソンが抱える課題や悩み
市場競争の激化や価値観の変化・将来の不透明感が加速する中、新しい価値創造に向けて顧客視点の深掘りと強化を行いたい、これまでの思考の枠を外して多角的に考えられる力を身につけたい、などの課題が多いです。
また「創造」や「デザイン」という言葉自体に一種の“アレルギー反応”がある企業・部門の風土をどう変えていくべきか、「創造性」を個人ではなく組織として安定的に担保していくためにはどうしたらよいか、といった組織課題のご相談も多くいただいています。
■サービスの特徴・強み、身につくスキル
アカデミックな理論を背景に、当社の実際のプロジェクトで培った経験値や知恵をふんだんに取り込んだオリジナル教育コンテンツを作成しています。また当社のグローバルネットワークとも連携し、国内外のフィールドにて実践知を得るところまでを1プロジェクトとして伴走します。それにより、「実務現場で使えるスキル」を獲得していただけます。

たとえば「DXDキャンプ」では、約4カ月にわたるワークショップ形式での学びと、実際の企業課題を解決するフィールドワークなどをもとに、AI時代に求められる洞察力や意思決定力、実行力を実践的に習得します。また、企業研修では、組織文化や課題に応じてプログラムをカスタマイズするとともに、学びを現場で実践・定着させる仕組みづくりまで伴走しています。
■受講生の声
「デザイナーなら普通にやっていることを、もっと有効活用するための具体的な方法がわかるようになりました。『デザイン』の解釈がかなり広がるプログラムでした。なんとなく思っていたことや、自分のやることがはっきりするかもしれません」(若手インハウスデザイナー)
「こちらがモヤモヤととりとめのない話をしても、それってこういうことですよね?と言語化してくれて、かつそれを拡張してくれます。タテ・ヨコ・奥行きを広げながら伴走いただけるのがとてもありがたいです」(商品企画・教育担当者)
「若手デザイナーの新しい視点・感性・個性を活かしながら、ワンチームとしてアイデアを生み出す方法を学ぶことができた」(企業デザイン部門教育担当者)
https://dxdcamp.com
以上、3社による「デザイン研修」をご紹介しました。デザインの学びといっても、デザインを言語化して判断するスキルや、アイデアをアウトプットするスキル、問いを立て実現していくまでの実践的なスキルといった多様なアプローチがあります。また、後編では株式会社インフォバーン、株式会社グッドパッチ、株式会社ニジボックスの3社を取材。企業や個人が抱えるそれぞれの課題に幅広く対応するデザイン研修がまだまだありますので、後編もぜひご注目ください。
編集:JDN編集部




