メルカリの新オフィス内、社員専用カフェラウンジのために制作した「found perspective」は、20脚すべてをメルカリで仕入れることから始まったプロジェクトである。新たに椅子を設計するのではなく、流通の中にある既存の椅子を一点ずつ観察し、その構造やクセを読み解くことを出発点とした。
象徴的だったのは、左右に連結する構造を前提に設計されたアーム付きチェアである。手すりの形状は左右非対称で、複数脚が並んだときには違和感がないが、一脚だけで見るとその非対称性が“クセ”として立ち上がる。その癖を消すのではなく、より認識できるようにすることを選んだ。座面をわずかに削りとり、面の形状自体も対称ではない状態へと編集した。もともと潜んでいた構造的なずれを、造形として浮かび上がらせる操作である。
改修は常に編集的である。座面の張り替え、色の再構成、パーツの再配置などを通して、元のものの価値を尊重しながら、視点の焦点だけを少しずらす。価値を創作するのではなく、既にある視点を編集する。その積み重ねによって、背景の異なる椅子たちはラウンジの中で均質ではない風景をつくり出している。 found perspectiveはものを変えるプロジェクトではなく、ものの中に潜んでいた視点を見たてる試みである。