第312回 太田琢人 (デザイナー/アーティスト)

[we+の推薦文]

太田さんと出会ったのは2019年、彼が武蔵美を卒業して間もない頃だった。発表されたばかりの「Rubbish things」を拝見し、既存のどの文脈にもおさまりきらないパンクな作風に強い衝撃を受けたことをいまでも鮮明に覚えている。

その後の活動はめざましく、個的な視点と社会的な視点を自在に行き来しながら制作される作品には、常に社会や他者への鋭い問いや批評性が込められている。同時に純粋にものづくりを楽しむ姿勢を失わず、その二面性が独特の深みと軽やかさを与えているように思う。

太田さんの取り組みには新しいデザインの潮流を予感させる。今後の実践がどのように広がっていくのかを楽しみにしている。

we+(コンテンポラリーデザインスタジオ)

リサーチと実験に⽴脚した独⾃の制作・表現⼿法で、新たな視点と価値をかたちにするコンテンポラリーデザインスタジオ。林登志也と安藤北⽃により2013年に設⽴。日々の研究から生まれた自主プロジェクトを国内外で発表しており、そこから得られた知見を生かした、R&Dやインスタレーション等のコミッションワーク、プロダクト開発、空間デザイン、アートディレクションなど、さまざまな企業や組織のプロジェクトを手がける。FRAME Awards、Wallpaper* Design Awards, Dezeen Awards、ELLE DECO International Design Awards等受賞多数。作品はドイツのVitra Design Museumなどに収蔵されている。

http://www.weplus.jp

編集部からの推薦文
その作品を素晴らしいと感じた時、いろいろな賛辞はあるが、太田さんの作品を見ると「異様な魅力」や「怪しい美しさ」といった言葉が浮かんでくる。

今年はじめて開催された個展では、言葉や概念に引用符を付けるという大胆なメタ的アプローチで、私たちが共有している言語や認識の脆弱性にフォーカス。写真や立体、詩という3つの異なる表現方法と世界観が展開され、空間全体で多層的な視点を提示した。

肩書きや表現方法にとらわれず、その時々の自分の答えを提示していく太田さんの活動にこれからも注目したい。
太田琢人(デザイナー/アーティスト)

太田琢人(デザイナー/アーティスト)

1993年フランス生まれ。2017年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。2022年東京藝術大学美術研究科デザイン専攻修士課程卒業。2019~2025年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科の助手として従事したのち独立。物と人間のコミュニケーションについて興味を持ち、日常の観察の中で新たな視座の発見を作品へ変換する。特定の分野に固執せず、プロセスや考え方の流動性と多元的思考を大切にしている。主な展示に「logx」(SKWAT-PARK-,東京,2025)「結晶化したエアークオーツの聲」(contrast,東京,2025)「Thinking Piece」(Dropcity、イタリア、2023)、「藝大アーツイン丸の内 2022」(丸ビル、東京)など。

https://www.instagram.com/ohtatakuto/