翠陵の家

2015 / 個人

施主とつくりあげる建築

ランドスケープデザイナー家族が住まう住宅。Barn(農家の作業小屋)のような簡素でありながら豊かな生活の器をつくろうと考えた。場所は西東京の高尾、浅川を見下ろすなだらかな丘陵に位置し、天皇陵へと続くイチョウ並木の参道に面した旗竿状の奥まった場所に、そっと置かれた単純な切妻の家である。

庭と家のリビングやアトリエが一体として使えるように、大きな開口や段差なく続く床で内外をつなげた。2階に登ると、棟梁の下の天井の高い空間が家全体をつなぐ役割を果たしている。家そのものはコンパクトな箱だが、それぞれの空間を行き来する体験は多様になるようデザインしている。

外壁の焼杉は、クライアントが自ら製材から焼く工程すべてを時間をかけて行なった。建物施工の完了時には行政の検査を通す最低限の骨格の工事まで終えて引き渡し、その後クライアントが住みながら仕上げ工事や庭づくりも行い、竣工して5年後にようやくやり残したところがなくなってきた。設計から施工、そして完成後とあらゆるプロセスを通じて、「暮らす」ことと「つくる」ことが一体となった「現代の農家」だ。(吉田周一郎)

撮影:吉田周一郎

吉田周一郎+石川静/shushi architects(建築デザイン事務所)

吉田周一郎+石川静/shushi architects(建築デザイン事務所)

自然をフィールドに、建築と建築をめぐる領域をデザインするクリエイティブチーム。長年、別な道で建築を生業としてきた吉田周一郎と石川静が、2021年春にshushi architectsts(シュシ アーキテクツ)として合流。シュシには、「主旨(コンセプト)」がぎゅっと詰まった、「種子」のような建築をつくり、仲間とともに育て、世界中に花を咲かせたい、という思いが込められている。

吉田周一郎
徳島県生まれ、京都大学建築学科修了。鹿島建設建築設計部、RCRアーキテクツ(スペイン)を経て、2008年に吉田周一郎建築設計を設立。2016年にshushi architectsに改称。

石川静
東京都生まれ、東京都立大学建築工学科卒業。NTTファシリティーズ、三菱地所設計を経て、2021年にshushi architectsに合流。

https://shushi.tokyo/

2021/8/4 14:35