地球上には、未来へと受け継いでいきたい貴重な資源や、人々が築いてきた素晴らしい伝統が数多く存在します。しかし、それらの中には、放っておくと失われてしまうものも少なくありません。DNPでは、すでに採れなくなってしまった石や木といった資源、あるいは劣化が進む素材にしか残されていない伝統的な文化や技術を、膨大な情報としてデータ化し、記録・継承していく取り組みをおこなっています。

今回の展示では、日本で古くから着物などに用いられてきた伝統的な柄「江戸小紋」、そして日本の伝統的な色彩や文様を再構築して生まれたデザイン「MiDCiD」を、時間軸をテーマに空間全体にプリントしました。

歴史や伝統は、一秒一秒、一瞬一瞬という時間の積み重ねの中で築かれてきたものです。その積層はまるで地層のように、重なり合い、奥行きを持った厚みとなって表れます。その中で、時の流れの奥深さが浮かび上がらせるのが、江戸時代から受け継がれてきた江戸小紋です。そして、これから未来に向けて築いていく時間の中に見えてくるのがMiDCiDです。

空間に散りばめられたそれぞれのデザインが、過去から現在、そして未来へと続く時間の軸を描き出します。私たちは、歴史ある伝統が持つアイディアや概念を情報として現代と結び付け、次の世代へ、さらにその先の世代へと受け継いでいくことを願っています。