ALLU

2024 / Valuence Holdings Inc.

バリュエンスホールディングス株式会社が運営する、ラグジュアリーブランドの希少アイテムや時代を超えて受け継がれる一点物のプレオウンド(リユース)品を取り扱うプレオウンドブランドショップ「ALLU」の新宿旗艦店プロジェクトです。

ALLUは、モノを手放す際に「廃棄」ではなく二次流通を選ぶきっかけをつくることで、新たな価値や気づきを提案するブランドとして生まれ変わりました。私たちはデザイナーとして、この新しいブランドコンセプトと企業の目指す姿に呼応し、4つのキーコンセプトをベースに内装デザインを探求しました。

(1)循環
経済圏における循環の核のような役割を果たすALLUを、地球環境における生態系の核である「土」に見立て、「土」をキーマテリアルとして採用。「土から生まれ、土に還る」自然と人の共生のストーリーを体現した空間です。

(2)人と自然の共生
自然との共生を、サステナブル素材を使って空間を構成することや、自然を模した景観を日本庭園で表現。内装材の94%に天然素材やサステナブル素材(環境や社会課題に配慮した素材)を採用し、什器や家具も端材・廃材を使って製作しました。空間を巡るなかで、使われている素材や家具から環境問題への気づきを促し、デザインの工夫を通じて問題に対する一つの解決策を体感してもらうことで、自然との共生につながることを期待しています。

(3)価値の再定義
役目を終えれば捨てられてしまう店内の什器も作品と捉え、経年変化が楽しめる素材や耐久性のある素材を使うことで、年月を重ねるほどストーリーが加わり、価値が高まります。これはブランドのフィロソフィーともリンクしています。

(4)気づきの喚起
環境問題をテーマにしたコンテンポラリーデザインや、新しい気づきをもたらすコンテンポラリーアートを取り入れ、商品と共鳴するショップ空間を体験いただくことで、訪れるゲストに環境への気づきや再認識を促すことを目指しています。

今回、マテリアルの選定にあたり、メーカーが扱う既製品のマテリアルパレットにとどまらず、実際に工場へ赴き、このプロジェクトのために素材をつくるプロセスを確認しました。例えば、試作タイルや廃棄タイルを原料とし、日本のゴミ処理技術「溶融炉」によって家庭や工場から発生する大量のゴミを減容・無害化した溶融スラグを釉薬として使用した特注タイル、国産の土を練り込んだ特注の和紙、国産の土を手で捏ねてブロック状に積み上げたローテーブルなどです。

また、床に使用したガラスブロックの施工方法としては、接着剤を使わず敷き詰めることで産業廃棄物とならず、再利用が可能な仕様にしました。この試みは、デザイナー自身の素材への理解だけでなく、社会的な課題や問題点、リサイクル構造など環境への理解につながり、それを反映したアプローチとなっています。

AtMa inc.(クリエイティブユニット)

AtMa inc.(クリエイティブユニット)

鈴⽊良と⼩⼭あゆみにより2013年に設⽴されたクリエイティブユニット。ファッションショップやレストラン、ウィンドウディスプレイなどの空間のデザイン、ホテルやアパートメントのディレクション、プロダクトデザイン、インスタレーションなどのクライアントワークに加え、近年では社会課題などを取り上げた⾃主制作に取り組み、また⾃⾝の作品やアーティストとのコラボレーションを⾏えるスペースの運営と3つの軸を持ち、活動の幅を広げている。

FRAME AWARDS (Emerging Designer of the Year2020)、Design Anthology Awards、PARIS DESIGN AWARDS、KYOTO GLOBAL DESIGN AWARDSなど受賞。武蔵野美術大学空間デザイン学部非常勤講師。

https://atma-inc.com/project/
https://www.instagram.com/atma_inc/?hl=ja

2025/7/9 11:45