2022

「軽く、座り心地が良く、美しい」

私たちは、優れた椅子に必要な最も大切な要素をこの3つだと考えています。

今回の椅子は、軽さを生み出すために必要最低限の部材で全体を構成しています。全体を構成する部材はすべて、極限まで細く、薄く、削り込まれています。そして各部分はそれぞれが関係し合い、部分と全体は連動し、強度を生み出しながら美しく造形されています。細く、薄くは軽さのため、部分と全体の連動性は強度と美しさのためです。

そしてすべては、「最高の座り心地」のためです。この「最高の座り心地」は、私たちが最も大切にしている価値です。

私たちの椅子は、どの部分の形に関してもそうあるべき明確な理由があり、「なんとなく」という場所は一箇所も存在しません。細部にいたるすべての形は、優れた椅子に必要な3つの要素を具現化することを目的に、きっちりとデザイン設計されています。

この椅子をさらに詳しく解説すると、部材のすべての断面は木の葉の形をしています。この木の葉形の断面は2本の稜線、すなわちエッジを持っています。今回はこのエッジに対していっさい面取りをおこなわず、鋭く尖らせた状態を刃物で仕上げています。緊張感を生み出すエッジの精度、完成度には、今回相当のこだわりを持って形にしました。

それはまるで人を斬るための道具、「刀」のように
人を殺めるための道具、「刀」のように

「刀」の緊張感を目指して心血を注いで仕上げています。

なお、今回の「刀」の製作は山田英和氏にお願いしています。山田氏は、私が世界で最も信頼している職人で、私の職人修業時代の兄弟子にあたる方です。今回の椅子「刀」を、このように緊張感ある状態に仕上げられる職人は、世界でもそう多くないでしょう。豊富な経験と知識に裏打ちされた、高い技術力と造形センスを持っていなければ、横田哲郎の椅子「刀」は完璧には仕上げられないことでしょう。私は、そう、考えています。

 
横田哲郎(家具デザイナー)

横田哲郎(家具デザイナー)

1969年、東京都生まれ。東京藝術大学デザイン科を卒業。卒業後はアーティストとして活動し、26歳の時に家具の道を志す。上松技術専門校木工科を卒業。木工家の谷進一郎先生のもとに弟子入りし、徒弟制度のもと木工家具職人としての修業を積む。その後、建築設計事務所、大手家具メーカーなどで各種デザイン、設計の修業を積む。36歳の時に家具デザイナーとして独立。2021年、51歳の時に「横田椅子デザイン設計事務所」を開業。

「座るという行為をデザインし
椅子で世界を変えていく
日々の暮らしに喜びと幸せを
誰もが感じられる世界に」
これが私たちの理念です。

https://www.instagram.com/yokota.chair.design/

2022/10/12 15:15