Homo Mobilitas

2024

Homo Mobilitasは、実践の中で社会を見つめる一つのきっかけとして機能するオブジェクトである。自転車を椅子として見る事の現代的視点、離れていく物と人間の距離感、諸外国に対してガラパゴス化した日本の可能性と弱さ、オブジェクトが持つ社会に未だに存在する性差、たった一つのオブジェクトを眺めることで知ることになる情報を共有したいという思いで制作した。

私は現代のものづくりに必要な姿勢として、業界へ投げかける新しさよりも、圧倒的な観察と人々に次のコミュニケーションを促す物の生産をするべきだと考える。それはポーズとしての既存概念の引用などでは決してなく、均質化や多様化が生んだ分断を、ムーブメントや文化形成で乗り越えることができると希望を抱いているからだ。日本にはデコチャリや族車など独自に乗り物を改造する土壌がそもそも備わっていることも大きな理由である。

正直、機能性を担保するためだけに利用され、実際の機能と切り離されてしまったオブジェクトが可哀想だと感じる。私達が現代で扱う必要があるオブジェクトを自らで見出す。そういった目線の獲得がこれからのものづくりには必要である。

太田琢人(デザイナー/アーティスト)

太田琢人(デザイナー/アーティスト)

1993年フランス生まれ。2017年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。2022年東京藝術大学美術研究科デザイン専攻修士課程卒業。2019~2025年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科の助手として従事したのち独立。物と人間のコミュニケーションについて興味を持ち、日常の観察の中で新たな視座の発見を作品へ変換する。特定の分野に固執せず、プロセスや考え方の流動性と多元的思考を大切にしている。主な展示に「logx」(SKWAT-PARK-,東京,2025)「結晶化したエアークオーツの聲」(contrast,東京,2025)「Thinking Piece」(Dropcity、イタリア、2023)、「藝大アーツイン丸の内 2022」(丸ビル、東京)など。

https://www.instagram.com/ohtatakuto/

2025/9/4 15:35