SKIN CARE LOUNGE BY ORBIS

ブランドコンセプト「ここちを美しく」を空間化した旗艦店

2020年夏に東京の表参道にオープンした、化粧品メーカー・オルビスの初となる体験特化型施設「SKINCARE LOUNGE BY ORBIS」。店舗ディレクションをTakramの緒方壽人さん、店舗設計をMOMOKO KUDO ARCHITECTS(MMA)の工藤桃子さんが手がけました。

「ここちを美しく」をコンセプトとする同施設の特徴や手法などについて、工藤桃子さんにコメントをいただきました。

■背景

青山の人通りの多い一角にオープンした2層からなる本施設は、スキンケアブランド「ORBIS」初の体験特化型の旗艦店です。ORBIS本体のリブランディングから始まったプロジェクトとして、MMAはコンセプトメイキングから参加し、設計、店舗オープンまで数年間一貫して関わってきました。

■コンセプト

ORBISのコンセプトである「ここちを美しく」を空間化した設計では、1階はジュースバーが路面に設置された、ORBISの商品ラインナップが見られるオープンな場所、2階はアプリ会員専用のプライベートな場所とし、フロアごとにメリハリのある特性を付与しました。

1階は自分の肌を知る場所として、中央に体験型メインカウンターやハンドウォッシュカウンター、オリジナル商品を展開するクリエイトカウンターを設置。タイルや塗装、時間によって光が変化する光柱、植栽、上部LEDの映像と、心地よい空間をつくるために動きのある設計を心がけました。

SKIN CARE LOUNGE BY ORBIS 1階/体験型メインカウンター

1階/体験型メインカウンター

2階はサロン、半個室のパウダールーム、ワークショップスペースを設けています。サロンは天井高を抑え、ゲストを包みこむような落ち着きのある空間にしています。また、1階には外からつながってソファに落ちる葉の陰が美しい植栽を、2階には空間の中にダイナミックに浮遊する植栽を設計の中に入れることができ、植物の有機的な存在感が建物の中と外を繋いでいます。

SKIN CARE LOUNGE BY ORBIS 2階/半個室パウダールーム

2階/半個室パウダールーム

■特徴

1階の正面入り口の突き当たりには商品が一列だけ見える商品棚を設置し、入った時に商品群を全面に見せないことで、体験を全面に感じながらも“売る”という機能をさりげなく見せています。

SKIN CARE LOUNGE BY ORBIS 正面入口

正面入口

デジタル表現になりがちな情報を空間の中に入れるため、モニターをできるだけ排除し、プロジェクターで布やブラインドなどに投影する工夫を行いました。手摺りの擦りガラスでできた光柱を5本立て、抜け感が強い空間に奥行きを感じる設計にしています。

また、この建物を象徴する床の素材には手で割った形が異なるタイルを使い、空間を柔らかく感じさせています。タイルは生産する時に色ムラなどでハネられる量が多いため、今回はすべての色を使い切るという目標で提案しました。表現としては有機的で、クオリティとしては安定しているタイルを1階の全面に敷いています。

SKIN CARE LOUNGE BY ORBIS 1階/床材として使用されているタイル

1階/床材として使用されているタイル

2階の最もプライベートなサロンスペースは天井高を抑え、特別に設計した柔らかい木の質感を生かした照明によって光が壁に向かって反射し、人の手による壁の塗装テクスチャーの揺らぎが見えます。その光がゲストを包みこむような、洞窟のように落ち着きのある空間にしています。

SKIN CARE LOUNGE BY ORBIS 2階/サロンスペース

2階/サロンスペース

所在地 東京都港区南青山5-7-1
設計 MOMOKO KUDO ARCHITECTS(工藤桃子建築設計事務所)
ディレクション Takram
施工 D.BRAIN co.,ltd.
敷地面積 320m2
竣工日 2020年7月
撮影 川島崇志