喫茶 竹の熊

小国杉と水源を活かして設計された喫茶

水庭に囲まれて建つ、熊本県・南小国町にある「喫茶 竹の熊」。南小国町を象徴する小国杉を使用してつくられた建物は、TORU SHIMOKAWA architectsの下川徹さんが設計を担当しました。

今回は、「喫茶 竹の熊」を運営する株式会社Forequeの穴井俊輔さんに、建物がつくられた背景や特徴についてうかがいました。

■背景

「喫茶 竹の熊」は、阿蘇北外輪山のふもとに位置する熊本県・南小国町にあります。南小国町は、古くから林業の町として知られ、小国杉の植樹は、いまから250年ほど前の江戸時代からはじまりました。

しかし、今日ではその担い手が減り、この地域の林業はさまざまな課題に直面しています。こうしたなかで、次世代に小国杉の新しい可能性を拓くためにつくられたのが「喫茶 竹の熊」です。

■建物の特徴

阿蘇山周辺は数多くの水源があることで知られ、この町には清らかな水が人々の暮らしの間を流れています。この土地らしい店を目指した「喫茶 竹の熊」の建築は、南小国を象徴する小国杉と清らかな水をふんだんに活かして設計されました。

小国杉はしなやかで強度が高く、目の詰まった美しい木材として知られています。建物には杮葺きの屋根、磨き丸太の棟木、杉皮葺きの天井や藩屏など、伝統的な工法や建築様式を現代の視点で見つめ直し、小国杉を余すことなく使っています。

「喫茶 竹の熊」

敷地内には目の前に広がる田園と繋がる大きな水庭があり、これを取り囲むように店舗は建っています。室内の喫茶室では水に潜り込んだかのように、開放的な板の間では水上に浮かんだかのように、さまざまな感覚で水庭をたのしむことができるのが建築の大きな特徴です。また、水面に反射する光に照らされ、店内の景色は刻々と表情を変えていきます。

「喫茶 竹の熊」

田園と繋がる水庭

■提供される料理

「喫茶 竹の熊」ではお客さまに南小国の魅力を味わっていただけるよう、目の前に広がる田んぼで採れたお米とこの地域の食材をふんだんに使ったおこわや、水がきれいなこの土地ならではの料理として、豆乳と季節の果物を使ったのど越しのいい甘味も提供しています。

「喫茶 竹の熊」 おこわと甘味

「喫茶 竹の熊」で提供されるおこわと甘味

長い時間をかけて湧き出たこの土地のおいしい水を使い、コーヒー豆や茶葉などの素材にこだわった飲み物も用意。また、2種類のクラフトビールや四季でレシピを変えたビネガーサイダーなど、ここでしか味わえないオリジナルの飲み物も提供しています。

「喫茶 竹の熊」クラフトビール

南小国ののどかな風景をイメージに、新鮮な小国杉で香り付けした爽やかな味わいが特徴のクラフトビール

所在地 熊本県阿蘇郡南小国町
設計 下川徹/TORU SHIMOKAWA architects
構造 Atelier742
造園 西海園芸
施工 たねもしかけも
クリエイティブディレクション 長尾美術
飲食監修 Pusis
敷地面積 516.71m2
延床面積 86.32m2
開業日 2023年5月19日
撮影 haruki anami / 穴見春樹
運営会社 株式会社Foreque