編集部の「そういえば、」2023年2月
ニュースのネタを探したり、取材に向けた打ち合わせ、企画会議など、編集部では日々いろいろな話をしていますが、なんてことない雑談やこれといって落としどころのない話というのが案外盛り上がるし、あとあとなにかの役に立ったりするんじゃないかなあと思うんです。
どうしても言いたいわけではなく、特別伝えたいわけでもない。そんな、余談以上コンテンツ未満な読み物としてお届けする、JDN編集部の「そういえば、」。デザインに関係ある話、あんまりない話、ひっくるめてどうぞ。
「デザインスコープ展」の、まわりにスコープ
そういえば、富山県美術館で開催中の企画展「デザインスコープ―のぞく ふしぎ きづく ふしぎ」(以下、「デザインスコープ展」)を観に行きました。「デザインスコープ展」については、JDNのレポート記事でご紹介しているので、このコラムでは富山県美術館や富山のまちなかで気づいたことを書いていきます。
私が訪れたのは祝日だったこともあり、家族連れの姿を多く見かけました。富山県美術館には、子どもも楽しめる工夫がたくさんあります。
その中で今回ご紹介したいのは、「TADおさんぽビンゴ」です(TAD:Toyama Prefectural Museum of Art and Design)。美術館内の設備や彫刻作品など25個の項目があり、該当するものを見つけたらビンゴカードに穴を開けていくというものです。
ビンゴ参加者は、3階建ての広々とした美術館を探検するような感覚で巡れます。館内には抽象的な彫刻も多く、素通りしてしまいがちなそれらの常設作品も「あった!」と発見することで、作品を鑑賞するきっかけになりそうです。
ビンゴカードの項目は作品名ではなく「ヌメっとした石彫」や「ぐにゃり、鉄骨」など、印象を描写したキーワードが記載されています。「ヌメっとしてるの、これかな?」と、その作品に対して自分が抱く印象とも照らし合わせることになります。
写真ではなくイラストで描かれているところも、容易な答え合わせにしない=じっくり観察する、という行動を促すポイントになっていると感じました。抽象的な作品を誰かと一緒に観た時の、会話の糸口にもなりそうです。というのも、私は富山へ行く新幹線で『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(川内有緒著)を読んでおり、抽象作品に対して抱く印象は人それぞれで、そのズレを楽しむという鑑賞方法の可能性について、ぼんやり考えていたからです。
それから巡っている際、ビンゴカードにある「カラフルな顔」の作品を見た小学生の男の子が「スパゲッティに見える!」と言っていたのも、面白かったです。顔の輪郭部分が麺に見えたのでしょうか?この作品がレストラン前にあったことも、スパゲッティに見えた要因の一つかもしれません。
ただ、彼はビンゴ探しではなく、レストランの通りがかりにこの作品を見たという状況でした。もしビンゴカードの「カラフルな顔」というキーワードを知っていたら、スパゲッティの発想には至らなかったのかもしれません。発想のきっかけになるビンゴカードには、逆に発想を狭めてしまうという面も同時にはらんでいるのだとも感じました。
さて、富山駅周辺の街中には不思議な形のオブジェやパブリックアートが各所に見られます。自由気ままに作品を見て、その印象を話し合いながら散歩をする楽しみ方もできそうです。
さらに富山のまちなかは、ビルの奥に立山連峰がそびえる景色が広がっています。富山県の主要施設が集まる都市でありながら、すぐ隣に大自然を感じ、人間の生活と大自然が地続きであることを感じさせるような、不思議な光景でもありました。
「デザインスコープ展」はあと数日で会期終了(2023年3月5日まで)ですが、富山には富山市ガラス美術館や富山城址公園など、見所がたくさんあります。アートとデザインを発見する富山散歩に、また行ってみたいと思いました。
(小林 史佳)
Jリーグ開幕、新ユニフォーム
そういえば、日本代表選手が活躍した「FIFAワールドカップカタール2022」から早2カ月、今月Jリーグが開幕しました!今シーズンは30周年という記念すべき年で、特設サイトが開設されるなどすでに盛り上がりをみせています。そして、同じく話題になるのが各クラブの新ユニフォーム。そこで、JDNと同じく25周年を迎え、同じ東京に拠点をかまえるFC東京の新ユニフォームに注目してみました。
2023年に25周年を迎えるFC東京の新ユニフォームは、「過去と未来」「アナログ(リアル)とデジタル」「スポーツ」「ライフスタイル」の交差をテーマに、90年代のストリートファッションからインスパイアされた柄をジャガードで表現。また、クラブが生まれた90年代にスタンダードだった襟付きのデザインを採用しています。
また、もう1つ注目したいのは、背番号などの書体。Jリーグでは2021シーズンより、ユニフォームで表示する選手番号や選手名を書体フォント「J.LEAGUE KICK(Jリーグキック)」で統一しています。
フォントデザインは、デンマークのデザイン会社のKontrapunkt(コントラプンクト)が担当し、監修は株式会社Takramがおこないました。サッカー観戦を現地やテレビだけではなく、スマホやタブレットなどの小さい画面で観戦する機会が多くなり、活躍した選手が誰なのかわかりにくいという問題点から、視認性に配慮したユニバーサルデザインを取り入れたデザインになっています。こちらのデザインは2021年のグッドデザイン賞を受賞しました。
しかし、今シーズンを持ってリーグ全体での統一した書体フォントの導入は終了するそうです。理由は、当初の目的の視認性の向上は一定レベルを達成し、クラブ・リーグともに知見を蓄積できたため、新たな成長戦略の一環として、2024シーズンよりクラブオリジナルフォントを導入することにしたとのこと。そのため、全クラブ統一の書体フォントが見れるのは今シーズンが最後になるかもしれません!選手の華麗なプレーはもちろん、デザイン面からも日本のサッカーに注目してみるのもおすすめです!
(岩渕真理子)