本記事では、思わず足を運びたくなる建築やデザインスポット、そして金沢ならではのショップを4つ紹介します。
まるで泊まれるミュージアム「ハイアット セントリック 金沢」

「ハイアット」ブランドとして北陸初進出となった「ハイアット セントリック 金沢」
JR金沢駅西口の目の前に位置するホテル「ハイアット セントリック 金沢」。2020年の開業以来、国内外から訪れる多くのゲストを魅了し続けている同ホテルは、金沢の伝統工芸と現代アートが融合した金沢らしい美意識が息づく上質な空間を提供しています。
館内では随所に、絵画や彫刻、九谷焼などの陶磁器、加賀友禅に漆芸、ガラス、インスタレーション、そして骨董や古美術の数々が惜しげもなく展示、設えられています。ゆうに100点を超えるという館内の作品群は、その多くを金沢在住、あるいは金沢で学んだ作家らが手がけています。
例えば、メインエントランスでゲストを迎えるアートワーク「野鍛冶の門冠(のがじのかんむり)」は、縁起が良いとされる「門冠の松」を鉄作家の小沢敦志さんが、鮮やかなブルーの背景「Blue Rhythm」は金沢市在住の画家・大森慶宣さんが制作しました。

金沢で使われていた鉄の道具に、金沢金箔の企業「箔一(はくいち)」の金箔を施している
客室はいずれも32m2以上のゆとりある設計で、加賀友禅や九谷焼の意匠をモダンに昇華させたインテリアが取り入れられています。伝統的なモチーフをコンテンポラリーなデザインに落とし込んだ空間は、細部まで金沢の歴史を感じさせつつ、ゆったりと落ち着いて過ごすことができます。

「シティービュー ツイン」
ベッド奥の壁にあるアートワークは、金沢市内の路上を和紙に転写して制作したもの。その道の上を、子どもが下駄を履いて歩いている様子を金箔で表現したそうです。
また、食事を楽しむオールデイダイニング「FIVE - Grill & Lounge」も、アートや工芸作品の数々が空間を彩っています。

壁面を飾るのは、日本画家・栗原由子さんの「加賀野菜図」
ダイニングでは、県内でも限られた飲食店でしか提供されない最高級の黒毛和牛「能登牛(のとうし)」をはじめ、地元の旬の食材をふんだんに使った、目にも舌にも美味しい料理やお酒が心ゆくまで味わえます。

グリルディナーコースより「能登牛(のとうし)サーロインのグリル ガーリックマッシュドポテト 季節野菜」
また、最上階である14階に位置するルーフトップバー「ルーフテラス バー」は、金沢の街に浮かんでいるかのような解放感とゆとりのある店内で、贅沢な時間を満喫することができます。五感でめぐる旅にぴったりで、泊まることだけを目的に訪れたいと思えるホテルと言えるでしょう。

ルーフトップバー「ルーフテラス バー」には、金沢市生まれの陶芸家の中村卓夫さんの立体作品「表面波-ゆらぎ-」が展示
住所:石川県金沢市広岡1-5-2
https://www.hyatt.com/hyatt-centric/ja-JP/kmqct-hyatt-centric-kanazawa
触れて実感する用の美の真髄「柳宗理記念デザイン研究所」
日本を代表するインダストリアルデザイナーの柳宗理は、1956年に金沢美術工芸大学の嘱託教授として就任し、約50年もの長きにわたり教鞭をとったことが広く知られています。
その縁から、作品やデザイン資料など約7,000点あまりが、2012年に大学へ寄託されたことをきっかけに設立されたのが、柳宗理記念デザイン研究所です。

「柳宗理記念デザイン研究所」エントランス
研究所が位置するのは、趣きある街並みで知られる「ひがし茶屋街」にもほど近いエリア。伝統芸能の鼓をモチーフにした「鼓門」や、雨や雪から人々を守る巨大なガラス屋根「もてなしドーム」で知られる、JR金沢駅の東口(兼六園口)から路線バスやタクシーで手軽にアクセスできます。
研究所の1階には、柳の作品を集めた常設展示資料室と、企画展を行う資料室が、2階にはレクチャールームや研究書庫などが設けられています。一般の方々にも柳の仕事を広く知ってほしいとの意向から、大学施設でありながら、無料かつ事前予約不要で見学することができます。

常設展示資料室
資料室では、柳の仕事を総覧できる年表や、全国各地の企業とともに製品化したプロダクトの数々が紹介されているほか、ダイニングやキッチンなど、実際の生活を想定した空間での展示が行われています。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久所蔵品でもある「バタフライスツール」をはじめ、半世紀近く愛され続けているカトラリーや食器、鏡、照明器具、鍋・フライパンなどの調理器具が多数並んでいます。

柳宗理がデザインしたプロダクトが並ぶ、実生活をイメージした展示空間
また、東京オリンピックのトーチホルダーや、札幌オリンピックの聖火台、東名高速道路の橋梁などの大規模なものまで、幅広い仕事を残した柳の生涯を貴重な映像や写真、過去に刊行された書籍などから柳のデザインについて学ぶことができます。
今回施設を訪れて驚いたのは、展示空間、そして置かれた作品の数々には、キャプションや説明文は一切なかったこと。それは「余計な知識や先入観なしに、無心にモノと向き合い、自らの眼で素直に見て、ふれて、そこにあるデザインを感じ取ってほしい」という意向からだそうです。さらに、展示されている作品を実際に触ることができるのは、教育機関である大学に併設した施設ならではないでしょうか。
訪れた人それぞれが好奇心のままに、気になった作品を手に取り、じっくりと観察できる。そんな貴重な体験が叶う施設です。
金沢の街と人をつなぐカフェ「HUM&Go#(ハムアンドゴー) 橋場町スタンド」
柳宗理記念デザイン研究所から徒歩2分、目と鼻の先にあるカフェ「ハムアンドゴー 橋場町スタンド」は、「ゲストと町のプレイヤーをつなぐカフェ」をコンセプトに運営されているお店。すぐ近くには、1922年に架けられた鉄筋コンクリート製の3連アーチ橋で、国の登録有形文化財となっている「浅野川大橋」、そして浅野川が流れています。

エントランスに置かれているのは、石川県能美市にある九谷焼窯元・上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま)の六代目・上出惠悟さんの作品
カジュアルなホステル「THE SHAREHOTELS HATCHi金沢」の1階に位置する店内では、スペシャリティコーヒーのほか、加賀棒茶を使ったラテやソフトクリーム、能登塩サイダー、金沢湯涌柚子サイダー、金沢クラフトビールなど、地元ならではのドリンクとフードメニューが気軽に楽しめます。

近隣のミュージアムや文化施設で行われる催しのチラシやDMが多数置かれ、地域にまつわる情報収集にも役立つ
ハムアンドゴーは、この橋場町スタンドのほかに、石川県立図書館内や金沢21世紀美術館も徒歩圏内の香林坊エリアに店舗があります。フードメニューがさらに充実しているとのことなので、ぜひ立ち寄ってみてください。
見立ててもらった香りが旅の記憶に「フェートン フレグランス ロングバー」
ある香りを嗅いだ瞬間に記憶がよみがえるという経験は、きっと誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。「プルースト効果」と呼ばれるこの現象は、嗅覚が五感の中で唯一、感情や記憶を司る脳の領域(大脳辺縁系)に、情報を直接的に伝達する構造を持つために起こるものだそうです。
もし記憶に残るような充実した旅を楽しめたのなら、自分自身へのお土産に、この地域にしかない特別なお店でフレグランスを見立ててもらうという体験で旅を締めくくるのも楽しいかもしれません。
2019年、金沢駅前の商業施設「金沢フォーラス」内にオープンしたフレグランスの専門店「フェートン フレグランス ロングバー」は、ここ数年で特に注目を集めている「ニッチフレグランス」と呼ばれるインディペンデントなブランドをパイオニアとして積極的に紹介し続けてきたお店です。

「フェートン フレグランス ロングバー」
「フェートン」は、代表の坂矢悠詞人さんが2010年に石川県加賀市で創業したセレクトショップ。こだわり抜かれた独自の審美眼で、国内外から多くのファンに支持されている名店です。
ファッションにとどまらず、紅茶専門店「ティートン」の運営や、学びに重点を置いた雑誌『大勉強 by PHAETON』の発行などでも知られていますが、特に坂矢さん自身が創業当時から積極的に紹介してきたのが、ニッチフレグランスの数々でした。
「フェートン フレグランス ロングバー」は、趣のある木製の長いカウンターに、フレグランスのボトルがずらっと並び、まるでヨーロッパかどこかの古い薬局のようです。そして、店頭で接客するスタッフのフレグランスに関する膨大な知識と経験にはとても驚かされます。

「フェートン フレグランス ロングバー」店内
訪れた人の感覚的な香りの印象や好みを丁寧に聞き出し、言葉だけに頼るのではなく、いくつかのブランドの香りとそこから広がるイメージ、周囲の人の感じ方まで含めてわかりやすく伝えながら香りの提案をしてくれます。
なお、金沢市内にあるもう1つの店舗「フェートンフレグランスハウス」では、さらにゆったりとした気分でスタッフと相談しながら、今の自分にしっくり来るフレグランスを選ぶ体験ができるそうです。
住所:石川県金沢市堀川新町3-1 金沢フォーラス 1F
https://phaeton-fragrance.com/pages/phaeton-fragrance-longbar
名建築や工芸、デザインと、街中のいたるところに高い美意識とこだわりが感じられる、古都・金沢。現代まで脈々と守り伝えられてきた尽きることのない魅力を、旅を通して五感で満喫してみてはいかがでしょうか?

1954年に現在の金沢駅が完成した際に制作された、JR金沢駅西口の加賀人形の郵便ポスト
取材・文・撮影:Naomi 編集:岩渕真理子(JDN)




