下村木の民家

2017 / 個人

富山県にある個人住宅の計画。敷地は富山県の比較的ゆったりと住宅や商店が建ち並ぶ地域にある。東南側の隣地には児童公園があり、その向こうには立山連峰が見える。台形の敷地形状に対して中門造りのようにL型のボリュームを配置し、西側の前面道路に対しては将来ミセとして使用できる子ども部屋と車庫を配置した。落雪を考慮して北側隣家との距離をとり、東南側の公園に対しては、二階に生活の中心を配置することでプライバシーを確保しながら開放的に公園側に開くことができる構成とした。

雨や雪が多い地域のことから、屋根を分割して流量を分散させる形状にするために、直交する二つの切妻の棟を貫入させた。それによって生まれる破風は光や風を取り入れる環境制御の部位となる。積雪地域において合理的な木構造をつくるために、和小屋ではなく扠首構造の合掌造りにすることで部材数を減らし、梁に与える曲げ応力を低減しながら効率的に広い空間を構成した。二つの棟が交差する部分は立体トラスとなり、その下に生活の中心となる場がつくられる。一階部分は外周部の基礎の立ち上がりを約1mと腰高にすることで、上階の荷重を受ける柱の応力を小さくすると共に、積雪時に家を守る壁として機能させた。

近世以前の民家がその土地の風土に適応してパラメトリックに各々のビルディングエレメントが調整されていたように、民家がもつ特徴的な構成や慣習を記号としてではなく、技術的特性として現代において再構成した。

Architect:Aki Hamada Architects(Aki Hamada, Takeshi Tanabe)
Structure:Konishi Structural Engineers(Yasutaka Konishi, Noboru Enshu)
Photo:Takumi Ota

AHA 浜田晶則建築設計事務所(建築家・teamLab Architectsパートナー)

AHA 浜田晶則建築設計事務所(建築家・teamLab Architectsパートナー)

浜田晶則

1984年富山県生まれ。2012年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2012年Alex Knezoとstudio_01設立。同年teamLabにアーキテクトとして参加。2014年AHA 浜田晶則建築設計事務所設立。同年よりteamLab Architectsパートナー。2014年-2016年日本大学非常勤講師。2020年-日本女子大学非常勤講師、明治大学兼任講師。コンピュテーショナルデザインを用いた設計手法で建築とデジタルアートの設計を行い、人と自然が持続的に共生する社会構築を目指している。

おもな作品に「綾瀬の基板工場(2017)」、「パンとエスプレッソと自由形(2018)」、「魚津埋没林博物館KININAL(2018)」など。グッドデザイン賞2019、Iconic Award 2019, Best of Best、the 2A Continental Architectural Awards 2017, Second Placeなど国内外で受賞。

http://aki-hamada.com/

2020/10/14 15:55