綾瀬の基板工場

2017 / 株式会社ワイ・ケー電子

厚木基地近くにある基板工場の増築棟である。一階部分は当初作業場として計画していたが、ショールームや地域へのマルチスペースへと変更になったため、多用途に使える柔軟性と開放性が求められた。また、現在使用している工場の建て替えも将来的に検討していたため、増築する際の汎用性が高く、空間やプログラムが使い手の能動的な関わりによって可変する建築を設計しようと考えた。

この建築は、さまざまな条件に適応させるためにモデル化した構造軸組と、更新可能性と可変性を高めて細かな制御を可能にする建具などのエレメントからつくられている。これら各要素の独自性を担保しながら並置される構成によって、空間が特徴付けられた。

当該敷地は工場と住宅が並存している準工業地域にあり、工場は街に対して閉鎖的なプログラムだった。その多くが鉄骨造で、外壁は工業的なマテリアルで覆われている。住宅もプライバシーを守るために閉鎖的になりやすいプログラムであるため、ポジティブな意味でこの2つのプログラムが交わることは少なかった。敷地の隣家では洗濯物を干したり犬の散歩をしたりと、日常的な住生活がある。そんな日常のある場に建つ工場がどうあるべきかを施主と一緒に検討した。

そこで出てきたのが、工場と住宅の間をとりもつ「開かれた木造の工場」というイメージだった。このような場が人々の能動的な介入によって日々変化しながら、人が集まる場としてこの地域に受け入れられていくことを期待している。

この建築は建具によって空間の大きさを変えることができるが、立体トラスの欄間部分がすべてつながる一室空間になっている。天井が高く気積が大きいため、一般的な天井吹出の空調計画では空調機のスペックが高くなってしまう。そこで空調計画も居住層と環境層に分け、1つのグリッド内で循環するように床面に吹出口と吸込口を設置し、居住層のみを空調する計画とした。それにより、イニシャル・ランニングコストを抑えた空調計画となり、費用対効果の高い快適性を獲得することができた。

Architect:Aki Hamada Architects(Aki Hamada, Ryo Saito)
Structure:Konishi Structural Engineers(Yasutaka Konishi, Noboru Enshu)
Lighting:SIRIUS LIGHTING OFFICE(Hirohito Totsune, Ami Tohya)
Landscape:SfG Landscape Architects(Akihiko Ono)
Environment:DE.lab
Photo:Kenta Hasegawa

AHA 浜田晶則建築設計事務所(建築家・teamLab Architectsパートナー)

AHA 浜田晶則建築設計事務所(建築家・teamLab Architectsパートナー)

浜田晶則

1984年富山県生まれ。2012年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2012年Alex Knezoとstudio_01設立。同年teamLabにアーキテクトとして参加。2014年AHA 浜田晶則建築設計事務所設立。同年よりteamLab Architectsパートナー。2014年-2016年日本大学非常勤講師。2020年-日本女子大学非常勤講師、明治大学兼任講師。コンピュテーショナルデザインを用いた設計手法で建築とデジタルアートの設計を行い、人と自然が持続的に共生する社会構築を目指している。

おもな作品に「綾瀬の基板工場(2017)」、「パンとエスプレッソと自由形(2018)」、「魚津埋没林博物館KININAL(2018)」など。グッドデザイン賞2019、Iconic Award 2019, Best of Best、the 2A Continental Architectural Awards 2017, Second Placeなど国内外で受賞。

http://aki-hamada.com/

2020/10/14 15:55