小山ヶ丘の増築

2018 / 個人

多摩丘陵の郊外の住宅地に建つこの住宅は、1階が美容室の店舗併用住宅だった。おもに地域住民がリピーターとなっているプライベートサロンとして運営されてきたが、これからの事業拡大を視野に入れ、増築を行うことになった。

■光をフィルタリングするデバイス

この増築部の大きな特徴は、ガラス張りの壁面に対して外側に配置された木とステンレス鏡面の格子である。年間の直射光に対して遮蔽と反射を計算することで、夏の日射遮蔽と冬の日射取得を最大にする配置と角度を決定した。また、プライバシーという視野のパラメータを設定することで、利用に合わせて遮蔽モードを変えることができる柔軟なスクリーンとなっている。構造とは無関係に振る舞う自由な立面は、光や視線をフィルタリングしながら、空や道の動きを映し、時間によって変化していく映像的な立面をつくる。それは郊外住宅地における、現代のデコレイテッド・シェッドとしての立面をもった建築である。

開口の少ない既存部に対して集熱・集光装置として機能する増築部によって、室内の環境はより一層外部と接続される。住み始めたクライアントが外部環境の移ろいに対して敏感に応答し、時間によって変化する光や熱に対して個人的な嗜好が生まれていた。そのような変化する環境の斑の存在によって居場所を能動的に見つけていくように、空調と照明により人間が楽をする環境よりも、より動的に活動したくなる環境が、次の時代の建築と人間のあるべき関係だと考えるのである。

■既存の設備に適応するやわらかな格子

1階の美容室の計画では、住宅でありながら日常とは異なる空間であり、かつプライバシーも守られる親密な場をつくることが求められた。天井に配置されている既存の空調や照明の位置を境界条件として設定し、ひとつながりの三次元曲面を形成する格子天井をつくった。凹凸のあるアカマツの木を壁に配置したが、天井の格子はその凹凸の部材寸法に合わせて厳密に設計した。この格子が設備を隠しながら配光と照度を確保し、シャンプー台側へのプライバシーを制御する壁へと連続的に変化させることで、より親密な場をつくろうとした。

Architect:Aki Hamada Architects (Aki Hamada, Takeshi Tanabe, Musashi Makiyama)
Structure:Aki Architect (Rumi Yamaguchi)
Environment:DE.lab
Textile:nuno(Yuki Tsutsumi)
Construction:Misawa Home A project + Kikushima
Photo:Kenta Hasegawa

AHA 浜田晶則建築設計事務所(建築家・teamLab Architectsパートナー)

AHA 浜田晶則建築設計事務所(建築家・teamLab Architectsパートナー)

浜田晶則

1984年富山県生まれ。2012年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2012年Alex Knezoとstudio_01設立。同年teamLabにアーキテクトとして参加。2014年AHA 浜田晶則建築設計事務所設立。同年よりteamLab Architectsパートナー。2014年-2016年日本大学非常勤講師。2020年-日本女子大学非常勤講師、明治大学兼任講師。コンピュテーショナルデザインを用いた設計手法で建築とデジタルアートの設計を行い、人と自然が持続的に共生する社会構築を目指している。

おもな作品に「綾瀬の基板工場(2017)」、「パンとエスプレッソと自由形(2018)」、「魚津埋没林博物館KININAL(2018)」など。グッドデザイン賞2019、Iconic Award 2019, Best of Best、the 2A Continental Architectural Awards 2017, Second Placeなど国内外で受賞。

http://aki-hamada.com/

2020/10/14 15:55