Libra

2019 / AGC株式会社

2019年に東京・京橋のAGC Studioにて開催された「AGC Studio Exhibition Vol.27 鏡と天秤」でのインスタレーション作品。AGCが開発した、耐候性・光透過性などに優れた特徴を有するフッ素樹脂フィルムに、張力を与えて大きなガラスを浮遊させる作品を制作した。

■力の均衡

我々が生きている世界に常に存在する重力、抗力、摩擦力、振動、蒸発などの力の流れは直接的に目には見えない。この作品は、フッ素樹脂「ETFEフィルム アフレックス®」とガラスの物性を用いて、それらが動的に均衡する状態を構造として成立させている。45度に傾く182kgの二対の大きなガラスは、それだけでは倒れてしまう。そこにフィルムをかけ、97kgの二対のガラスの塊によって張力をかけることで、力の均衡が維持されながら大ガラスとガラスの塊は浮遊する。

■水の流れ

二対の漏斗からフィルムに水が落ち、複数の水が結合して大きくなると、自重と摩擦力の均衡が崩れて水が滑り落ちる。超撥水性のフィルムが水の接触角を大きくし、ふくらみのある水玉がつくられる。フィルムの上に配置された光学ガラスは、滑り落ちる水の流れを遅くし、中央の大きな水たまりと一体になるまでの時間を操作する。水たまりの中央には球体が漂い、それが波紋を生む磁場となる。調和された水音が彫刻のように立体的に降りそそぎ、次第にその密度が高くなっていき、雨が降る。その雨はフィルムを震わせ音を鳴らし、水に波紋を生じさせ、静かに蒸発していき、循環し続ける。

■埋没した光と闇

「Libra」の脇には二対のガラスが床に埋め込まれている。ガラス越しに光を見る行為は、映像を見ることであり、窓から外の世界を覗く体験を想起させる。複製された海にいくつかのオブジェクトが浮遊したイメージと三行八連のテキストは、両義性と均衡のネットワークをあらわす。ガラス越しに闇を見る行為は、自分自身を見ることであり、窓から内の世界を覗く体験を想起させる。室内につくられた苔庭に囲まれ、スクリーンとしてのガラスの手前と奥で日常と非日常の世界が融和する。

Architect:Aki Hamada Architects(Aki Hamada, Ruta Stankeviciute)
Sound, Sound System:Ray Kunimoto
Structure:Jun Sato
Graphic:Gottingham + AHA
Photo:Gottingham

AHA 浜田晶則建築設計事務所(建築家・teamLab Architectsパートナー)

AHA 浜田晶則建築設計事務所(建築家・teamLab Architectsパートナー)

浜田晶則

1984年富山県生まれ。2012年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2012年Alex Knezoとstudio_01設立。同年teamLabにアーキテクトとして参加。2014年AHA 浜田晶則建築設計事務所設立。同年よりteamLab Architectsパートナー。2014年-2016年日本大学非常勤講師。2020年-日本女子大学非常勤講師、明治大学兼任講師。コンピュテーショナルデザインを用いた設計手法で建築とデジタルアートの設計を行い、人と自然が持続的に共生する社会構築を目指している。

おもな作品に「綾瀬の基板工場(2017)」、「パンとエスプレッソと自由形(2018)」、「魚津埋没林博物館KININAL(2018)」など。グッドデザイン賞2019、Iconic Award 2019, Best of Best、the 2A Continental Architectural Awards 2017, Second Placeなど国内外で受賞。

http://aki-hamada.com/

2020/10/14 15:55