第323回 PAN- PROJECTS (建築デザインスタジオ)

[we+の推薦文]

昨年9月、シンガポールで開催されたFIND – Design Fair AsiaでPAN- PROJECTSの八木祐理子さんと出会った。展示されていたのは、テキスタイルの端材を撚り合わせたロープによるインスタレーション「Entwined Matters」。建築家の仕事でありながら、その軽やかさと建築からの飛距離に惹かれた。

八木さんと高田一正さんが主宰するPAN- PROJECTSは、ロンドンを拠点に活動している。「ものづくりの前提条件を疑い、工法から変えることで新しいものを生み出したい」とお二人は語る。日本にいるだけでは気づきづらいラディカルな思想を、インスタレーションを通して社会に問いかけ、自らの建築にも生かしている。

ヨーロッパを中心に、日本や東南アジアへと活動の幅を広げるお二人。特定の土地に根を張らないからこそ、軽やかに各地を漂うようにプロジェクトに取り組んでいきたいという。これからも世界のどこかで、PAN- PROJECTSの作品に出会えることを楽しみにしている。

we+(コンテンポラリーデザインスタジオ)

リサーチと実験に⽴脚した独⾃の制作・表現⼿法で、新たな視点と価値をかたちにするコンテンポラリーデザインスタジオ。林登志也と安藤北⽃により2013年に設⽴。日々の研究から生まれた自主プロジェクトを国内外で発表しており、そこから得られた知見を生かした、R&Dやインスタレーション等のコミッションワーク、プロダクト開発、空間デザイン、アートディレクションなど、さまざまな企業や組織のプロジェクトを手がける。FRAME Awards、Wallpaper* Design Awards, Dezeen Awards、ELLE DECO International Design Awards等受賞多数。作品はドイツのVitra Design Museumなどに収蔵されている。

http://www.weplus.jp

編集部からの推薦文
ロンドンを拠点に活動するPAN- PROJECTS。コロナ禍の鬱屈とした空気がなお残る当時、国立新美術館で目にした「The Matter of Facts」の光景が鮮明に蘇る。当時は数々の展示やイベントが軒並み中止・延期に追い込まれ、多くの人々が言葉にできない不条理や悔しさを抱えていた。そうした状況下で彼らが掲げた「The Matter of Facts」は、日の目を見ることがなかったポスターやチラシなどの「新古紙」を収集・再構築した、渾身のインスタレーションだった。

受付の目前に立ち込める圧巻のボリュームと圧倒的な情報量。そこには、開催されるはずだった多くのイベント、そして関わった人々の「静かな声」が確かに宿っていた。社会の断層や人の感情までもデザインへと昇華させられるスタジオは決して多くない。彼らが生み出す空間や建築は、これからも問いを投げかけ、私たちの心を揺さぶり続けてくれるだろう。
PAN- PROJECTS(建築デザインスタジオ)

PAN- PROJECTS(建築デザインスタジオ)

PAN- PROJECTSはロンドンを拠点とする建築デザインスタジオ。八木祐理子、高田一正により2017年に設立されて以来、国際的に活動を展開している。建築行為を統合芸術として捉え、制作を通して生まれるストーリーを軸に、建築、空間、インスタレーション、プロダクトなど、領域を横断した幅広い実践に取り組んでいる。

高田は2022年より、Royal College of Art (UK)にてAssociate Lecturerとして教鞭を執り、建築再生をテーマとするスタジオを指導してきた。八木は2025年、これまでの実践と今後の可能性が評価され、英国建築家協会新人賞(RIBA J Rising Star Awards) を受賞している。

https://pan-projects.com/

2026/9/29 9:25