第324回 業天昭人 (株式会社 匠工芸/企画開発)

[齋藤精一の推薦文]

地域の産業には、ものづくり企業の内側からデザインを支える人がいます。匠工芸の業天昭人さんは、同社のデザイナーとしてオリジナル家具のデザインだけではなく、さまざまなプロダクトデザイナーと協働し、その発想と現場の技術をつなぐ重要な役割を担っています。

その仕事には「設計」という言葉だけでは伝えきれない奥行きがあり、家具の構造や素材、ものづくりのあり方をともに考え、形にしていくデザインの実践があります。織田コレクションの修復にも積極的に携わり、2025年に渋谷で開催されたウェグナー展では「ファーストチェア」の復刻も担当されました。

新しい家具を生み出すことと、受け継がれてきた家具を次の時代につなぐことの両方に向き合っている業天さん。旭川・東神楽町に根づく一人のデザイナーとして、その仕事に目を向けたい方です。

齋藤精一(パノラマティクス主宰)

建築デザインをコロンビア大学建築学科で学び、2006年、株式会社ライゾマティクス(現:アブストラクトエンジン)を設立。社内アーキテクチャ部門を率いた後、2020年に「CREATIVE ACTION」をテーマに、行政や企業、個人を繋ぎ、地域デザイン、観光、DXなど分野横断的に携わりながら課題解決に向けて企画から実装まで手がける「パノラマティクス」を結成。2023年よりグッドデザイン賞審査委員長。2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター。

https://panoramatiks.com/

編集部からの推薦文
家具は、デザインが決まった時点ではまだ誰の手にも届かない。構造や製造方法を検討し、試作を重ねて、ようやく量産できる製品になる。業天さんは、その工程を担ってきた人だ。

製造現場での3年間を経て設計・開発へ。IFDAの本審査用試作や「君の椅子プロジェクト」、中村好文さんデザインの「PECORA」の量産化など、デザイナーの意図を尊重しながら図面を実物へと落とし込んできた。自社製品「AG」では、製造現場の経験をもとに、シンプルな加工と構成で座り心地を追求している。つくり手とデザイナー、2つの視点を行き来する仕事にこれからも注目していきたい。
業天昭人(株式会社 匠工芸/企画開発)

業天昭人(株式会社 匠工芸/企画開発)

1985年北海道旭川市生まれ。2007年、家具メーカーの株式会社 匠工芸に入社。入社後3年間は製造現場で家具製作に携わり、その後、設計・製品開発へ。現在は自社製品の企画・デザイン・設計をはじめ、外部デザイナーとの協業による製品開発、他社ブランドのOEM製品、特注家具などの設計・開発を担当している。

デザイナーのスケッチや図面から、構造・製造方法を検討し、試作を重ねながら量産可能な製品へ落とし込むことをおもな仕事とする。二級家具製作技能士(手加工)。