上勝ゼロ・ウェイストセンター

ゼロ・ウェイストの理念のもと、地域の資源を使用した建築

ゴミをゼロにすることを目標に、廃棄物を減らす環境社会政策のことを指す「ゼロ・ウェイスト」。近年、国や地方公共団体、企業などさまざまな規模で取り組みがいっそう進められています。

徳島県上勝町には、そんなゼロ・ウェイストの理念を建物に踏襲した環境配慮型複合施設「上勝ゼロ・ウェイストセンター」が存在します。設計を手がけたのは、建築家の中村拓志さんが代表を務めるNAP建築設計事務所。町民から不要となった建具や廃材などを譲り受けつくられたという建物の特徴などについてコメントをいただきました。

■背景

徳島県上勝町は、豊かな自然や暮らしを守るためにゴミ自体を出さない社会を目指し、2003年に自治体として日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行いました。その背景には、ダイオキシン問題によって小型焼却炉を処分せざるを得なくなり、新たな焼却炉に支出する財政的な余裕がないという切実な事情もあったそうです。

上勝ゼロ・ウェイストセンター 徳島県上勝の風景画像

上勝町は、徳島県の中部に位置し、大部分が山に覆われている場所である

現在、再資源化率はなんと80%を超えている上勝町。町ではゴミ収集を行わず、生ゴミはコンポストを利用して各家庭で堆肥化し、資源ゴミは住民各自がゴミステーションに持ち寄って45種類以上に分別、まだ使えるものは併設のリユースショップに持ち込んでいます。

豊かな自然と美しい風景の中で、細かく分類された資源やリユースショップの持ち帰り可能な商品が整然と陳列されている様には、大量生産、大量消費、大量廃棄の時代を超えた、新しい価値観や可能性を感じさせます。

上勝ゼロ・ウェイストセンター

細かく分類された資源

上勝ゼロ・ウェイストセンター

■コンセプト

ごみを含めた地域の資源から建築を考える。

建物は馬蹄状になっており、「分別→保管→再生・販売」というリサイクル&リユースの工程に沿って機能を配置。45分別の検索性向上と移動距離最短化のため、円形の半屋外空間と矩形の室内空間をシームレスに連続させたものになっています。

町産の杉を用いた架構は、丸太の“太鼓材”と“半割材”を簡易な接合で組み合わせています。これは原木の力学的長所を活かしつつ、製材時のごみを減らし、メンテナンスや解体時の分別も容易とする計画であり、町の資源回収の悩みとなっている解体分離が難しい複合ゴミへの我々なりの答えでもあります。

上勝ゼロ・ウェイストセンター

住民説明会などで不要となった建具を募集したところ、人口1,400人の町で約700枚が集まりました。それらを調査・採寸・図面化・リペアし、ダブルサッシのファサードとしました。お年寄りが「あれは誰々の家の窓だ」と話しているのを見ると、これは真の意味での町民参加型建築であると実感します。

上勝ゼロ・ウェイストセンター

町民が不要になった建具を使用したサッシ

上勝ゼロ・ウェイストセンター

夜になるとかつて明りを灯していた家々の窓が、過疎化にあえぐ町を再び希望の光で照らすよう。

■課題となった点、手法、特徴

我々の関わる建設業は全産業の中で、廃棄物量、最終処分量共に20%前後を占め、とてつもない物量の廃棄と再資源化のためにエネルギーを費やしています。簡単に解決できる問題ではありませんが、このプロジェクトではゼロ・ウェイストの理念のもと地域資源を活用すること、そして資源を無駄にせず、極力廃材を出さない工事を行うこととしました。地域外から物を持ち込まないことは、無駄な梱包や輸送のためのコスト、燃料を減らす第一歩になります。

上勝産のスギ材を構造や内装に使用することにし、設計初期から上勝町・森林組合・製材業者・木材加工業者を含めた打ち合わせを重ねました。施工者の選定後に山から木を伐りだし、乾燥していては工期が間に合わないため、町と掛け合い、着工の1年以上前から総数350本のスギの原木を確保し、工事の際には町からの木材を支給するという形をとりました。山からの切り出し・製材・乾燥・加工をすべて町内の業者が行うことで、地域内経済と山林資源の活性化にも貢献しています。

また、設計にあたって町の廃屋などに足繁く通い、使われなくなったものに価値を見出すように知恵を絞りました。この建築はこれら資源活用の連鎖から全体が構成されています。町民から譲り受けた廃材の使用に際しては、公共建築として一般的に求められる性能・品質保証、瑕疵責任の緩和を議会や役場に認めてもらった上で、町からの支給材という形をとりました。町民・町役場の協力なしには竣工が不可能なプロジェクトでした。

上勝ゼロ・ウェイストセンター

持ち帰り可能な商品が並ぶリユースショップ

上勝ゼロ・ウェイストセンター

所在地 徳島県勝浦郡上勝町福原下日浦7-2
設計 中村拓志&NAP建築設計事務所
施工 北島コーポレーション
構造 山田憲明構造設計事務所
ブランディング・クリエイティブプロダクション・エクスペリエンスデザイン トランジットジェネラルオフィス
敷地面積 5,557.50m2
延床面積 1,176.40m2
竣工日 2020年3月
撮影 Koji Fujii/TOREAL