■背景・コンセプト

クライアントから求められたのは、ブランドの世界観を純粋な形で空間に表現するとともに、これまでにはない新しい存在感を持つデザインでした。そこで、自然界で起こる神秘的な現象や風景からインスピレーションを受けたブランドのキーマテリアルの表現や、資生堂のアイデンティティである「日本の美しさ」を感じることができる店舗デザインに加えて、体験性の高い空間づくりを目指しました。

ブランド初の旗艦店としてブランドのコンセプトを明確に伝えるため、物販を意識した通常の店舗とは異なり、商品の展示数を絞り込み、スタッフとのコミュニケーションの場としてのコンサルテーションサロンや、全身で体験する施術を行うプライベートキャビンなど、より深いサービスをおこなうためのスペースを設えた店舗になっています。

■手法、特徴

全体として、滑らかな造形によって生まれる柔らかな光とダイナミズム、そしてブランドのエッセンスでもある日本由来の素材が持つ力に着目することで、自然の神秘的な力と日本らしさを感じさせる繊細な魅力を表現しました。そして、それを美へと昇華できるよう新時代の技術力を感じさるデザインを目指しました。

サロンスペースでは、日本の山で産出された伊達冠石による天板や西陣織のクッションなど、日本由来の上質な素材に囲まれて豊かな時間を過ごすことができます。

より深いサービスをおこなうためのコンサルテーションサロン

ダイナミックな自然のエネルギーを感じさせる有機的なフォルムのファサードは、細かな凹凸のある左官で仕上げ、器のように優しく人々を受け入れる形に仕上がりました。

左官で仕上げたファサード

店舗内全体を照らす中央のスクリーンでは、ブランドキーカラーである玉虫色の光が緩やかに流れます。玉虫の光へのリアクションに着想を得ながら、形や素材を変えて随所で表現。テクスチャーのあるガラスを通したLEDの光は分散され、プリズムの煌めきを生み出しています。

玉虫色に流れる光

美容体験が可能なプライベートキャビンでは、光の反応によって玉虫色が滲む素材を使用。ファブリックの立体的なシャンデリアは、玉色の光の中に入り込んでいくような感覚を演出しました。

美容体験が可能なプライベートキャビン