UPPER DECK TOKYO

羽田空港 第2旅客ターミナルのフードコートに並ぶ名作チェア

デザインコンセプト
担当:中村拓志/NAP建築設計事務所

空を眺めて天候を読み、雑踏を見下ろして旅人の行く先を想像する。この空港独特のふるまいを作り出すために、店舗をテイクアウトタイプとして廊下を広げ、そこをラウンジ化している。

200脚以上の異なる椅子が並ぶのは、使用者が様々な座り方を選択できるという理由だけではない。自分が前回どの椅子に座って何を感じたのか、この記憶の蓄積が愛着を作るし、商業的にも、椅子自体が賑わい感を作り出すので、大きなスペースに同じ椅子が並ぶような閑散時の寂寥感を払しょくできる。

また、それぞれの椅子はテーブルごとに、時代や国境、デザイナーを超えて同じ形式・構造などの相似性により編集・配置。たとえば中国の明の時代の椅子と、それに影響を受けたウェグナーのYチェアやスタルクのミミングアームチェアを並べることで、椅子の歴史やデザイナーの想い、お国柄が見えてくる。

さらに、どの椅子を選ぶかによって、その人の趣味やグループ内の対人関係が想像できる。人物観察がたまらなく面白い空間。「他人は他人」と切り分ける社会が到来しつつある中で、他者への想像力を喚起する公共空間が目指されている。

所在地 羽田空港 第2旅客ターミナル南側 出発ロビー3階
オープン 2010年10月
デザイン監修 中村拓志 / NAP建築設計事務所
撮影 Masumi Kawamura