及時雨

2020

台湾を拠点に世界的に活躍する料理人、アンドレ・チャン氏と共催し、金沢で「PERSPECTIVES OF KANAZAWA(金沢・新しい視点)」というイベントを開催した。

アンドレ氏は日本が好きで、その中でも金沢が最も好きな土地だとうかがい、世界で活躍するアンドレ氏の“外から見た金沢の可能性”と、私たちの“内から見た金沢の可能性”をぶつけ合い議論することで、その境界線にあぶり出される輪郭が、新たな金沢の可能性を見出す新しい視点になり得るかもしれない。

こうした考えそのものをイベントのコンセプトとした。半年かけて議論を重ね、最終的にこのコンセプトから10品の料理に落とし込み、私たちは器を設え、アンドレさんがそこに料理を重ね、食体験としてゲストに振る舞った。この器はその中の一品で雨をテーマに制作した「及時雨」。

日本で3番目に雨の多い金沢では、雨を嘆くのではなく、雨のある景色を楽しむ気質があるため、その気質をモチーフとし、雨のようにスープを注ぎ一気に目の前に香りが充満する装置として制作した。

上町達也(代表取締役・デザイナー)

上町達也(代表取締役・デザイナー)

1983年岐阜県可児市生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、株式会社ニコンに入社し、おもに新企画製品の企画とデザインを担当する。資本主義経済によって加速した価値の異常な消費サイクルに疑問を抱き、手にした人の心を動かす持続的な価値を目指したものづくりをカタチにするため、2013年食とものづくりの街金沢にて「secca inc.」を設立。代表取締役をつとめる。

seccaでは独自の視点でこれからの問いを見定め、それらに対応した新たなモノと体験を生み出すことによって新価値の造形を目指している。現在、secca独自の経営を推進しながら、各作品のコンセプトメイキングをおもに担当する。金沢美術工芸大学非常勤講師/上海同済大学非常勤講師ほか。

https://secca.co.jp/

2023/9/20 9:10