デザインの

デザインの可能性と未来、「XSCHOOL」のその先にあるものとは?-XSCHOOL(3)
テーマ

「地域デザインの新たな未来」

  • UMA / design farm 代表/原田祐馬
  • 株式会社RE:PUBLIC 共同代表/内田友紀

新しい潮流を起しているプロジェクトから、「問題解決方法のヒント」や「社会との新しい関係づくり」を探る、「デザインの波」。第5回目のゲストは、企業や複数都市とともにイノベーション&イノベーターを輩出するプログラムを手がけている株式会社RE:PUBLICの共同代表である内田友紀さんと、地域に関わるプロジェクトに数多く携わってきたUMA / design farm代表の原田祐馬さんのおふたり。

聞き手:瀬尾陽(JDN編集部) 取材:佐藤理子(Playce) インタビュー撮影:中川良輔

異分野の講師とつくるXSCHOOLのプログラム

内田:XSCHOOLは“革新を続ける伝統のものづくり”をベースに、3つの柱を掲げています。そのひとつの柱が、「デザイン・Webデザイン・ものづくりにおいて高い専門性をもつ講師とともに、ディスカッションを重視した教室をつくる」こと。そこで3名のユニークな講師をお招きしました。まず、デザイン分野の講師に、原田さん。プログラムディレクターと兼任していただいています。

原田:2人目は、Webデザインやプログラミングを手がけている萩原俊矢さん。大学や企業、個人のWebサイト構築だけでなく、目まぐるしく変化しているインターネットと社会との向き合い方をさまざまな手法で探求している方です。ブラウザに溢れている「いいね!」を自動でまとめて押してくれるプログラム「どうでもいいね!」などを開発し、数々のユニークなプロジェクトを行っています。彼のプロジェクトを構築していく姿勢と、日常に溶け込んだインターネットと社会をつなぐウィットな表現が、XSCHOOLに参加するメンバーに大きな刺激を与えると感じました。

(左から)2016年度の講師の萩原俊矢さん、高橋孝治さん、原田祐馬さん、プログラムディレクターの多田智美さん

(左から)2016年度の講師の萩原俊矢さん、高橋孝治さん、原田祐馬さん、プログラムディレクターの多田智美さん

原田:それから、ものづくり分野には、高橋孝治さんを迎えました。無印良品の企画デザイン、防災プロジェクト「いつものもしも」のディレクションなどを手がけられています。商品を開発するだけでなく、「なぜつくったのか」の答えをきちんと商品のなかで見せていくという編集的な手法を確立されていて、さらにその商品が「社会にどのように役に立っていくべきか」まで視野に入れてデザインされています。彼の高い専門性と多様な視点は、XSCHOOLに絶対に必要だと思いました。

内田:事業化アドバイザーは、GOB Incubation Partners株式会社代表取締役の山口高弘さんにお願いしました。「挑戦する人を応援する」という気持ちを強く持たれている、百戦錬磨の起業家アドバイザーです。プログラムの後半にご登場いただき、地元企業の可能性と参加者のモチベーション、スキルを生かしたうえで、どんな形で事業視点を広げていけるかなど実現に向けての具体的なアドバイスをいただく予定です。

事業化アドバイザーの山口高弘さん

事業化アドバイザーの山口高弘さん

原田:今回のプロジェクトにおいては、山口さんの視点も大切だと思っています。デザイナーに欠けている、ものの見方を突きつけられる瞬間があるのではないかなと、僕自身も楽しみです。

内田:今回のプロジェクトでは、参加者みんなが筋肉痛になるかもしれません。分野を超えてコミュニケーションをとり、たくさんの人たちを巻き込んでいくことになるので、普段使っている言語や感覚が通用しない場面も出てくるでしょう。そんな仲間たちとチームアップしながら、理想とするものをどう実現するのかを考えていかないといけない。だけど、これを乗り越えたときに、強い力が備わっていくだろうと思います。

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チームごとに課題に向き合い、プレゼンを重ねていく

チームごとに課題に向き合い、プレゼンを重ねていく

デザインの未来
「XSCHOOL」のその先にあるものとは?

原田:XSCHOOLの考え方の基礎には、福井の抱える悩みや可能性をデザインやクリエイティブを通して視覚化させることで、近い規模の地域社会の未来を考えることにあるように思います。また、家族や個人に関わる問題だけでなく、公共性の高い問題もそれぞれの視点で読み解いて「じぶんごと」化させ、参加するメンバーのスキルを、さざまなかたちで社会に定着させる試みを大切にしたいと考えています。

内田:このような視点は、原田さんも私も建築を学ぶなかで得たのではないか、と以前話していたことがあります。私も大学では建築や都市計画を学んでいたのですが、デザインを考えるときには、「この土地の30年後の社会はどうなるのか」「100年前はどうだったのか」など時間軸を行き来しながら、課題や可能性を探り、この地域では誰がプレイヤーになるのかを考えて、最終的なデザインに落とし込んでいました。建築は、地域の風土と人の関係性を再構築しながら、共有される造形をつくるという、公共性の高い視点を養ってくれたと思います。

原田:いま僕は、グラフィックデザインを中心とした仕事を手がけていますが、その背景には建築設計でも重要な「可視化されていない、人と人の関係性をつくっていくこと」に大きな興味があります。デザインの可能性もそこにあるんじゃないかなと考えていますね。

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これまで、さまざまな地域でのプロジェクトに関わらせていただいていますが、大切にしているのは、「人と会って、人と話す」ということ。すごくシンプルですが、これからのデザイナーの役割や社会との関わり方を見つけることにつながるのかなと思っています。

「人と会って、人と話す」を繰り返すXSCHOOL。これからのデザイナーの役割や社会との関わり方を見つけるヒントが詰まっている

「人と会って、人と話す」を繰り返すXSCHOOL。これからのデザイナーの役割や社会との関わり方を見つけるヒントが詰まっている

内田:私は、都市デザインの観点から、「そこに暮らす・関わる“人”が中心になって、持続的な創造が生まれる地域をつくる」というテーマをずっと抱えています。それを実現させるには、その人自身がもつ能力はもちろん、目の前にいる人、その土地がもつ資源など、いろんな可能性を再編集する視点が必要だと思うんですよね。そういう人たちが生まれてくると、土地にあるものがどんどん生かされていくし、新しい働き方や生き方をする人が増えていくと思います。

原田:XSCHOOLに関わった人たちが、これからどうやって経験を外で生かしていけるかということも重要ですね。それはおそらく時間がかかることで、5年後、10年後に浮き彫りになってくることだろうと思います。統合的に学びなおす土壌がある福井での試みにわくわくしています。

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福井で生まれはじめた、さまざまな“関係性”

福井で生まれはじめた、さまざまな“関係性”

内田:「都市で働く以外の何かに挑戦したい」「デザインやクリエイティブの力をもっと広い場所で生かしたい」けれど、「その挑戦の場がない」。そんな声をたくさん聞いてきたし、私たちも感じてきました。ならば、「挑戦する場を準備して、実践してみよう」それがXSCHOOLです。参加した人たちがプロジェクト終了後、実験する土壌を自らつくり出していくことにも期待しています。そのチャレンジに向かって、一歩踏み出す勇気も育むことができたらいいですね。

XSCHOOL発表会開催
『XSCHOOL発表会/東京 -福井からはじまる、小さなデザインの教室より-』
⽇時:2月19日(日)13:30~18:00
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター(東京都港区赤坂9-7-1ミッドタウンタワー5F)
http://makef.jp/make/project/pj1_tokyo/

『XSCHOOL発表会/福井 -福井からはじまる、小さなデザインの教室より-』
⽇時:3月11日(土)※時間未定
会場:福井新聞 風の森ホール(福井県福井市大和田2−801)

WONDERS│未来につなぐ ふくい魅える化プロジェクト make.f
http://makef.jp/