日本の伝統的な織物技法「裂織(さきおり)」に着想を得て、独自の技法「ORIGINAL SAKIORI」を開発しました。裂織は、物資が乏しかった時代に、使い古した布を何度も再利用するために生まれた、知恵と工夫の技法です。「物を大切に使い切る」という日本人の精神は、モノがあふれる現代だからこそ、あらためて見直されるべき価値観だと感じています。その想いを、テキスタイルデザインを通して社会に伝えていきたいと考え、この技法を形にしました。
廃棄される布地を繊細に裁断し、ヨコ糸として再構成。それを新たな織組織に取り入れることで、既存のプリントや柄の表情に奥行きを加え、まったく新しいテキスタイルへと生まれ変わらせます。もとの布地の色や柄を活かしつつも、織りによって生まれる立体感やリズムが、唯一無二の存在感を生み出します。
この技法は、2014年にロンドンのRoyal College of Art(RCA)在学中から継続して取り組んできた研究に基づくものです。これまでにロンドンのプリントメーカーをはじめ、京都、博多織、近江上布の職人など、多様なつくり手と協業しながら技術を磨いてきました。
その成果として、Alexander McQueenやdoublet.といった国内外のブランドにもテキスタイルを提供してきました。素材の魅力にとどまらず、環境や文化的背景をも内包する“語る布”として、これからも様々な方とのコラボレーションを通し新たな可能性を探り続け、研究と制作に取り組んでいきます。