PROUD Gallery Gotanda

「たためる壁」でレイアウトを変えられる、新しいかたちのショールーム

幾多の層をなす布で包まれたショールーム「PROUD Gallery Gotanda」。

これまでのマンション販売のショールームのあり方を問い直し、新しいショールームのかたちを生み出したというこちらの空間。設計を担当したDOMINO ARCHITECTSの大野友資さんに、この空間が生まれた背景や特徴などについて伺いました。

■背景

野村不動産が展開するマンションブランド「プラウド」を販売するためのショールーム、商談スペースを設計した。

通常、一定の規模を超えるマンションが計画されると、その竣工に先駆けてプレハブのショールームが敷地近くに建設される。内装や調度品までターゲット層に合わせてスタイリングされたモデルルームや、模型や映像で商材の魅力を伝えるプレゼンテーションルーム。購買意欲を高める演出が目白押しの、さながらテーマパークのようだ。

エンターテイメントとしてはとても興味深いのだけれど、一歩引いてみると、わずか数年で建設、取り壊し、販売期間内にも状況に合わせてレイアウト変更や改修工事を繰り返す。その都度大量の労力を費やすやり方が、果たしてこの時代にあっているのだろうか。そうした共通の問題意識からクライアントと議論を重ね、マンションのショールームという文化そのものを問い直す提案を行った。

その場限りの個別解ではなく、今後の新しいスタンダードとしての一般解になることを目指した。

■コンセプト

コンセプトに掲げたのは、「竣工後のレイアウト変更や増改築が容易であること」、「設計、施工、解体の流れが省エネルギーであること」、「モデルルームの中以外は仕上げすぎないこと」という3点。これらを達成するために、プレハブの構造はそのままに、軽やかなカーテンで空間を包んだ。

PROUD Gallery Gotanda

商談スペースの間仕切りは、カーテンに厚みを持たせた「たためる壁」とロールスクリーンを組み合わせることで、セミナーやイベントといった用途に合わせて臨機応変に空間のレイアウトを変えられるようにした。

たためる壁はアーチ状に開口部が抜けていて、動線のコントロールも自由自在だ。カーテンの艶やカーブ、色の重なりを丁寧に検討することで、プレハブの無骨な躯体を感じさせない、優雅で軽やかな空間となった。

PROUD Gallery Gotanda

■特徴

空間のコンセプトが、商談スペースはできるだけ仕上げずにカーテンで仕切るというごくシンプルなものなだけに、高額な商談をする空間として、体験のグレードはそれに応えるものになるよう注意した。

小口を縫製し、厚みを与えたカーテンは分厚い「壁」のような印象を持ち、エッジを丸くフィレットさせたカーテンは軽やかな「プリーツスカート」の裾のような印象を持つ。いずれも単なるカーテンに見えないよう、豊かな連想を生むよう心がけた。

PROUD Gallery Gotanda

PROUD-Gallery-Gotanda

また、実際に手を触れたり体を預けたりする家具や備品には、最終的な体験の印象がかなり左右されるため、インターオフィスが新しく始めた家具のサブスクリプションサービス「fittingbox」を活用し、従来のマンションギャラリーの商談スペースで使われているものよりも豊富な選択肢の中から、この空間に最適な家具や備品をセレクトしている。

PROUD Gallery Gotanda

商材物件で実際に使われる予定の素材やサンプルを、家具や造作の一部として流用している。高級マンション特有の装飾的なボキャブラリーを否定して排除するのではなく、解体してメタ的に扱うことで、その価値を再評価、再発見することを考えた。

PROUD Gallery Gotanda
所在地 東京都品川区西五反田7-6-8
設計・監理 DOMINO ARCHITECTS
カーテンデザイン 久米希実(Studio Onder de Linde)
家具サブスクリプション Fittingbox by inter.office
施工 株式会社彩都コーポレーション
延床面積 899m2
竣工日 2021年11月6日
撮影 Gottingham