日本新薬本社-KOKU

数奇屋造りの「続き間」を取り入れたオフィス

オープンで洗練されたカフェや美容院のような空間の、日本新薬本社屋内「コク」。創立100周年記念としてスタートしたこちらのプロジェクトの設計を担当したのは、大阪に拠点を置くREIICHI IKEDA DESIGNです。

代表である池田励一さんに、空間のコンセプトや設計の特徴について伺いました。

■コンセプト

京都府に本社をおく製薬会社、日本新薬本社屋内のフリーアドレススペースのデザイン。計画地は、西大路駅のそばに広がる広大な敷地に数棟の社屋が立ち並ぶ中の一角でした。

創立100周年記念として、2019年の暮れからプロジェクトがスタートしましたが、途中、未曾有の新型コロナウィルス感染症の蔓延により、一度立ち止まるも2021年夏にようやく完成を迎えることとなりました。

従来のように公道に面した建物ではないという環境条件から、取り残された内部を外部に繋げるところから意識していきました。まず、平行に並ぶ内外の境界線をV字のガラス壁として斜めのラインを取り入れることで、内外の境界面積増加を図りました。

さらに、もともと外部環境仕様として施されていた床のタイルを、V字ガラス壁に引っ張られるように新たな内部空間にも食い込ませることで、内外の境界を曖昧なものにしています。

日本新薬-コク 内観・外観画像

長い社歴のなか、増棟を繰り返す過程で社屋の外観はすべて赤茶の色を帯びていき、敷地が色付けされていくような景色が広がっています。この内部空間にも影響していくかのように、随所に染まりゆく過程を表現。

日本新薬-コク 外観画像

また、シーンカテゴライズを図るために、数奇屋造りの「続き間」の考えを取り入れ、襖のアウトラインをトレースしたスチールフレームを躯体梁のスパンに従いながら点在させました。

日本新薬-コク 内観画像

数奇屋造りの「続き間」を意識した空間

平面図

日本新薬-コク 平面図

遮音やプライバシーを確保するような、単に機能を求めた壁ではなく、オープンスペースながらも意識をコントロールし、“個々の領域がゆるやかに形成されるようなもの”を目指しています。自分にフィットした場所で、自分の時間を過ごしていただけたらと思います。

所在地 京都府京都市
設計 REIICHI IKEDA DESIGN
施工 かなざわ工務店
カーテン fabricscape
アート 加納徳博
音響 E'spec
家具 inter office
CI REIICHI IKEDA DESIGN
サイン 廣田碧(看太郎)
照明計画 Modulex
特注照明 vao place
植栽 ボンド
延床面積 369.8m2
竣工日 2021年8月
撮影 増田好郎