第240回 狩野佑真 (デザインディレクター/デザイナー)

[桐山登士樹の推薦文]

昨年のミラノサローネ サテリテで最も印象に残ったのが、今回紹介する狩野佑真さんである。とにかく制作スケールが大きい、体を張っている感がひしひしと伝わり、今後どう化けるのか気になる存在だ。そして今年は、ロッサーナ・オルランディ(Rossana Orlandi)に場所を移して、昨年の延長で錆にフォーカスしたマテリアル実験プロジェクト「Rust Harvest|錆の収穫」の家具を展示していた。決して同じモノは作れない赤錆と青錆の経年変化とアクリルによる素材の饗宴。この実験的な家具そのものの美しさや、時間を越えたロマンを鑑賞することができる。一方、出展にお金のかかるフォーリサローネで勝負をかけて出ているだけに、次のチャンス(接点)をどのようにつくれるのか老婆心ながら心配になった。世界的な同質化現象の中で、己の道を切り開こうとしている若いデザイナーの今後に大いに期待したい。

デザインディレクター桐山登士樹

桐山登士樹

デザインディレクター

デザインの可能性を探っていきたい。そんなことを考えて30年。さまざまなプロジェクトを通じて、デザインの力をアピールしています。

狩野佑真(デザインディレクター/デザイナー)

狩野佑真(デザインディレクター/デザイナー)

1988年栃木県生まれ。東京造形大学デザイン学科室内建築専攻修了。アーティスト鈴木康広氏のアシスタントを経て、2012年デザイン事務所「studio yumakano」を設立。江戸末期から続く川崎市内の造船所にスタジオを構え、プロダクトデザインを中心に、マテリアル開発からブランドディレクション、インテリア設計、アートワークなど実験的なアプローチを追求しさまざまなプロジェクトを行う。ミラノサローネやパリデザインウィークなど国内外で作品を発表している。おもな受賞にグッドデザイン賞、IFFTヤングデザイナーアワード、German Design Awardなど。

https://yumakano.com