【CSデザイン賞受賞者インタビュー】表現に込めるのは「温かさ」と「上質感」-関本明子(1)

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【CSデザイン賞受賞者インタビュー】表現に込めるのは「温かさ」と「上質感」-関本明子(1)
豊富なカラーバリエーションと汎用性の高さから、空間を彩る色素材として常に時代のニーズを支えてきた「カッティングシート®(以下、カッティングシート)」。2015年には既存の165色に加え、原研哉氏を監修のもと「白のバリエーション」を中心に48色が追加されて、ますます表現の幅が広がった。カッティングシートを開発した中川ケミカル主催の「CSデザイン賞(CS Design Award)」は、今年で34年19回という長い歴史を誇り、これまでに多くのデザイナー・建築家が作品を応募してきたアワードだ。「第19回CSデザイン賞」のグランプリ受賞者と準グランプリ受賞者のインタビューを通して、カッティングシートという素材が持つ可能性をお伝えしたい

第19回「CSデザイン賞」で準グランプリを受賞したのは、株式会社ドラフトでアートディレクターとして活躍する関本明子さんが手がけた「MIDTOWN CHRISTMAS 2014(以下、MIDTOWN CHRISTMAS)」。カッティングシートを効果的に使った統一感とインパクトのあるビジュアルが、東京ミッドタウンのクリスマスシーズンを華やかに彩った。受賞作品のコンセプトやデザインに込めた想い、関本さんが感じるカッティングシートの汎用性についてうかがった。

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クライアントと足並みをそろえたブランディングの形

私がアートディレクターとして所属する株式会社ドラフトは、広告宣伝やグラフィックデザインをベースに商品や企業のブランド開発、パッケージやカタログ制作、自社のプロダクトブランド「D-BROS」など、多岐にわたるデザインを手がけています。広告の案件というと代理店を介して制作会社が仕事を請け負うのが一般的ですが、宮田識(株式会社ドラフト代表)の思いのもと、クライアントと直接、ブランドを一緒に育てていくパートナーとしてお仕事させていただく事が多いです。

関本明子(株式会社ドラフト) アートディレクター。東京藝術大学大学院修了。ブランドの立ち上げから、ブランディング、広告、CI、パッケージデザイン、商品開発など幅広く活動

関本明子(株式会社ドラフト)
アートディレクター。東京藝術大学大学院修了。ブランドの立ち上げから、ブランディング、広告、CI、パッケージデザイン、商品開発など幅広く活動

現在、手がけさせていただいているお仕事のひとつが、「カンロ飴」で有名なカンロ株式会社さんの「ヒトツブカンロ」というブランドです。5年前に100周年を迎えるにあたり新たなブランドを立ち上げたいというご相談をTOKYO DESIGN WEEK株式会社さんを通していただき、ネーミングの提案から店舗のアートディレクションや商品開発、パッケージ、販促物のデザインなど全体を通して監修を行なっています。記念すべき100周年ということで、コンビニやスーパーに置かれる大きなラインだけではなく、飴菓子の価値を上げていくようなブランドの位置付けを提案し、『ヒトからヒトへつながるヒトツブ』をスローガンにギフトにふさわしい「特別感」を意識してデザイン・ディレクションしています。

『ヒトからヒトへつながるヒトツブ』をスローガンに、老舗菓子メーカー「KANRO」から誕生した「ヒトツブカンロ」

『ヒトからヒトへつながるヒトツブ』をスローガンに、老舗菓子メーカー「KANRO」から誕生した「ヒトツブカンロ」

これは先方からの希望もあったのですが、例えば缶入りのキャンディにはブランド名やロゴをいっさい入れていません。特に女性は、鞄の中に素敵なパッケージが入っているだけで嬉しかったり気分が上がったりしますよね。定番商品のカンロ飴には、和三盆や高知生姜などの素材を使うことで高級感をプラスしました。「ヒトツブカンロ」の店舗は、東京駅と大阪のルクアの2店舗あります。

ヒトツブカンロ 大阪LUCUA 1100店

ヒトツブカンロ 大阪LUCUA 1100店

ブランド立ち上がりのパッケージやロゴ、広告が完成したら終わりではなく、立ち上がり後に出てくる日々の様々な問題点を、足並みをそろえ一緒に解決し、ブランドを育てていくことをブランディングと考えています。

カッティングシートを効果的に配した「MIDTOWN CHRISTMAS」

第19回「CSデザイン賞」で準グランプリをいただいた「MIDTOWN CHRISTMAS」の仕事は、東京ミッドタウン全体のブランディングではないのですが、クリスマスイベントでのメインビジュアルの制作をミッドタウンさんにご依頼いただいたのがきっかけです。ミッドタウンに行くとわかるのですが、駅貼りのポスターをはじめ販促物や館内のフラッグ、店頭のポップ、什器などいろいろなところにグラフィックが施されます。でも、全体を通して強さや統一感が出ていないという悩みをこれまでにももたれていて、そこを改善してイベント自体が盛り上がるようなイメージビジュアルを打ち出したい、というご相談でした。

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おそらく東京ミッドタウンは、10代や20代の方が日常的に買い物に行く場所ではありません。ハイブランドが入っていて立地も六本木であることを考えると、ある程度年齢層が高めで上質感を求める人が集まる場所。そのような人たちの心をつかむ表現はどういうものだろう、ということでアイデアを絞り込んでいきました。

さらにこれまでは「MIDTOWN CHRISTMAS」というタイトルがあり、それに付随するイメージビジュアルがあったのですが、タイトルとイメージビジュアルが各々単体で使用されるとイメージが散漫になってしまう。そこで、「MIDTOWN CHRISTMAS」の文字自体をメインビジュアルにし、メインカラーを赤にしぼることで、館内全体を通して同じイメージで認識されるという視覚的効果を狙いました。そして完成したのがこのビジュアルです。

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特にガラス面は表と裏の両方から見える特性を活かすために、紙に印刷したポスターを貼るのではなくカッティングシートを使うと効果的だと考えたので中川ケミカルさんに相談しました。この仕事を手がけるまで知らなかったのですが、カッティングシートは少しだけ光を透かす効果があるので、ガラス面などに貼ると特に発色が良く見えるそうです。

まるで彫刻に近い感覚

ガラス面のほかにも、50mのディスプレイショーウィンドウがあるのですが、ここも一面カッティングシートで覆いました。ショーウィンドウ沿いはイベント時に長蛇の列ができるので、長時間並んでいても退屈することなく、クリスマス気分が盛り上がる楽しい演出ができないかなと考えました。どこにでも貼れて、下地の素材が変わっても見え方が変わらず素材感や色がブレないのがカッティングシートのいいところだと思います。東京ミッドタウンは地下も含め入り口もたくさんあるので、本当にいろいろな場所に使わせていただきました。

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カッティングシートは平面ですが、シートを削ってつくる感覚は、彫刻のように感じます。印刷とはまったく違った立体的な物質感がある印象です。彫刻同様カッティングシートは素材自体がきちんとしたものでないと、良いものには仕上がらないと思います。ものとしての存在感もしっかりあるので、ガラス面に彫刻のレリーフが彫られているようなイメージでつくらせていただきました。

かなり細かいデザインだったので最初は再現出来るのか?と心配していたのですが、とてもきれいに抜いていきました。素材ももちろんですが、色の違うシートを隣り合わせる部分があったのですが、重ねるのではなく、細かな部分でも余計なノイズが出ないようにツラを合わせる為に抜き合わせにするなど、完成時のクオリティも素晴らしく、安心して中川ケミカルさんに製造を委ねることができました。

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