編集部の「そういえば、」2023年9月

編集部の「そういえば、」2023年9月

ニュースのネタを探したり、取材に向けた打ち合わせ、企画会議など、編集部では日々いろいろな話をしていますが、なんてことない雑談やこれといって落としどころのない話というのが案外盛り上がるし、あとあとなにかの役に立ったりするんじゃないかなあと思うんです。

どうしても言いたいわけではなく、特別伝えたいわけでもない。そんな、余談以上コンテンツ未満な読み物としてお届けする、JDN編集部の「そういえば、」。デザインに関係ある話、あんまりない話、ひっくるめてどうぞ。

古本のかけらを感じるノート

そういえば、バリューブックスが制作した、「本だったノート」というノートを購入しました。

バリューブックス 本だったノート

長野県上田市を拠点に置くバリューブックスは、インターネットを中心とした古本の買取販売をおこなう会社です。同社では、回収した本の半分が市場の需要と供給のバランスにより買い取れず、古紙回収になってしまうという課題があるそうです。

新しい紙として再利用される古紙回収が悪いというわけではなく、「自分たちにできることはないか?」と考え、別の形で価値を見出したのが「本だったノート」です。

製造過程は、まず、JDNでも取材させていただいた工業用クレープ紙から生まれたブランド「crep」など、環境に配慮した事業を展開する山陽製紙が、古本を再生紙へと生まれ変わらせます。

その後、印刷は1955年創業の藤原印刷が担当しています。印刷には捨てられる予定だった「廃インク」を利用し、濃度調整をあえて中止。色合わせをおこなわないことで、1枚1枚意図していなかった自然なグラデーションをつくり出し、調整用紙の無駄な使用を避けられるといいます。

バリューブックス 本だったノート

デザインを手がけたのは、イラストレーター・ブックデザイナーの太田真紀さん。表紙のグラフィックは、「文字のかけら」をイメージしてデザインされたものです。実際のノートの中にも、古本だったことを感じさせる「文字のかけら」や色がいたるところに残っています。

バリューブックス 本だったノート

購入したノートがどんな本からつくられたのかを想像しながら、何に使うか考え中です……!そのほかにも、無印良品の店舗に集まる輸送用のダンボールを使用した「本とダンボールだったノート」なども販売されています。環境にも本好きにも配慮されたこちらのノート、気になる方はぜひチェックしてみてください!

(岩渕真理子)

子どもも大人も一緒に冒険に出る展覧会

そういえば、東京・立川のPLAY! MUSEUMで10月1日まで開催の「エルマーのぼうけん」展に滑り込みでうかがってきました。

ポスターなどグラフィックまわりのデザインを担当したのは、三宅瑠人さんと岡崎由佳さん

子どもの頃に読んだ方も多いであろう「エルマーのぼうけん」シリーズ。日本では累計700万部を超すベストセラーとして広く愛されています。

エルマーのぼうけん」展

本展では、70年以上前に描かれた130点を超す貴重な原画やダミー本など制作の資料を日本初公開。会場ではエルマーの冒険を楽しむために、ワニの背中をジャンプして川を渡ったり、嵐の中、りゅうとともに海を超えたりなど、絵本の世界に入って遊べる4つの展示が用意されていました。

(左)ワニの背中を渡るしかけが用意されていました。タイヤに乗ったときのような弾む感覚(右)床には電車のレールが投影され、リアルな音とともに動いていく様子が映されていました

また、会場で特徴的だったのは「音」の臨場感。動物たちの鳴き声や嵐の中を進む様子、りゅうが羽ばたく音など、展示にあわせ、物語に登場するさまざまな音を会場で楽しむことができました。はじめて「エルマーのぼうけん」の世界に触れる子どもも、童心にかえって楽しむ大人にとっても、ちょっと不思議であたたかくユニークな冒険の世界が詰まった展覧会でした。

(石田織座)