【SDGs時代の木とデザイン】第0回:森未来について

【SDGs時代の木とデザイン】第0回:森未来について
森林大国である日本にはさまざまな木材が存在しています。木材は限られた資源とは違い、再生可能で持続的に使い続けられる資源です。

現在の日本では、海外産木材の輸入増加による国内林業の衰退や、森林の手入れを怠るなどさまざまな問題を抱えています。数ある木材の性質や特徴を正しく理解し、その理解をものづくりの現場に活かすことができれば、木材の正しい需要が増え、森や木材に関する問題解決に繋げることができるのではないでしょうか。

そこで新連載コラム【SDGs時代の木とデザイン】では、木材コーディネート集団である森未来(しんみらい)の代表・浅野純平さんによる木材の紹介とともに、その木材が実際に使用された建築や空間、プロダクトをあわせてご紹介していきます!今回は第0回として、森未来についてご紹介します。

森未来について

はじめまして、株式会社森未来の浅野と申します。

森未来は、私が2016年に創業したスタートアップ企業です。私たちは「Sustainable Forest」をミッションに掲げ、林業や木材業界に関わる課題をITの力を活用して解決し、森林を持続可能な状態へと導き、次の世代につなげていくことを目指しています。

【SDGs時代の木とデザイン】第0回:森未来

「Sustainable Forest」のミッションを具現化するため、木材プラットフォーム「eTREE(イーツリー)」を運営しています。eTREEの立ち上げは、木材サプライチェーンの課題により、木材取引や設計・デザインに関わる方々に適切な木材の情報が届いていないと感じたことがきっかけです。

私たちは、eTREEを通じて木材関連の情報を効果的に提供し、木材サプライチェーンの透明性を向上させることで、業界全体にポジティブな影響をもたらすことを目指しています。設計者やデザイナーの方々が適切な木材情報を手に入れることで、木材の選定や価格交渉がスムーズにおこなえる環境を整えていきたいと考えています。

All Wood Platform「eTREE」

eTREEでは、日本全国の木材事業者の商品や価格、サンプルなどの情報を掲載しています。木材を使用したことがある方ならご存知かもしれませんが、木材には特有の課題が存在します。例えば、問い合わせ先を誤ると驚くほど高価になったり、高値で取引される木材でも交渉次第で安く購入できたりすることがあるなど、木材の価格設定方法について疑問を持ったことはないでしょうか?

これには理由があります。多くの木材は市場価格で取引されており、価格が定まっていないケースが一般的です。このため、需要者である設計者やデザイナーにとっては、木材の選定や価格交渉が難しいと課題になってきました。その結果、長い間、木材は採用されにくい素材とされてきたのです。

木材プラットフォーム「eTREE」

こうした課題に対処するために、eTREEでは日々木材データベースの最新情報を更新し、木材の価格透明性を高めるために努力しています。掲載していない木材情報も多数存在しているので、木材調達に困った際はぜひeTREEをのぞいてみてください。

新連載コラム【SDGs時代の木とデザイン】で伝えていきたいこと

本コラムでは、「SDGs時代の木とデザイン」と題して、ESG、SDGsを踏まえたトレンド、木材の活用方法や実際の事例についてお話しさせていただきます。今回はなぜ木材が注目されているのか、という点について説明します。

背景としてはいくつかあります。一つは、2015年9月に国連総会で採択されたSDGs。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標が定められ、特に目標15番の「陸の豊かさも守ろう」で木材の有効活用は注目されています。関連して、2020年に日本政府は、2050年カーボンニュートラルを達成することを宣言しました。その中に森林のCO2吸収目標もあり、にわかに注目されはじめました。これらは、マーケットからの需要ではなく、官製需要と言えるでしょう。

別の視点から「木材が注目されている」と感じることもあります。先日、あるデザイナーさんが、「木材は自然素材であり、一点一点異なっている。一度自然素材を使うと、均一的な素材に戻れなくなる」とおっしゃっていました。人は音楽でもアートでも、一定の不均衡やゆらぎを心地よいと感じるそうです。

自然素材は木材意外にもたくさんありますが、最も入手しやすく、加工しやすいのが木材なのではないでしょうか。本コラムでは、「環境に配慮された素材としての木材」と「より魅力的な空間をつくるための素材としての木材」の両側面から最新の木材事情についてご紹介したいと思います。

また、2025年にクリーンウッド法が法改正され、産地証明が義務付けられることになります。これまでのように、単に木材を使えば良いという時代は終わり、どのような木材を使ったのか、が問われるようになります。では、本当の意味で環境に配慮された木材とはなんなのか。今後木材を使うための注意点などの視点も踏まえ、数年先に求められるであろう「半歩先の木材利用」についても触れていきます。

ありがたいことに、さまざまな建築や内装で木材を見ることが多くなりました。しかし、それらの資金が森林に還元され、「Sustainable Forest=持続可能な森林」につながっているかというと、必ずしもそうではない側面があります。デザイナーのみなさまの木材利用がSustainable Forestに寄与していくことを期待し、このコラムを進めていきます。わかりやすさを心がけつつ執筆していきますので、お時間があるときにぜひお読みください。

【森未来からのお知らせ】
■第3回持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー2023「生物多様性を巡る国際動向:COP15とビジネス、政策への示唆」

登壇者:香坂玲さん(東京大学農学生命科学研究科 教授)、藤木庄五郎さん(株式会社バイオーム 代表)、藤原敬さん(一般社団法人持続可能な森林フォーラム 代表)
日時:2023年10月14日(土) 13:30~15:30
場所:オンライン(ZOOM)
定員:200名(先着順)
費用:無料
https://www.etree.jp/content/event_notice/seminar-0018/

株式会社森未来

株式会社森未来

木材が適正な価値を持ち、全てのプレイヤーに適切に還元される社会“Sustainable Forest”をミッションに事業を展開。木材プラットフォーム「eTREE(イーツリー)」を運営しており、木材の利活用や調達加工をサポートしている。

https://shin-mirai.co.jp/

浅野純平
IT業界から林業で起業するために転身。東京都の秋川木材協同組合で事務局長を務める。2016年株式会社森未来を設立。