【SDGs時代の木とデザイン】第1回:木材はサステナブルなのか?

【SDGs時代の木とデザイン】第1回:木材はサステナブルなのか?
森林大国である日本にはさまざまな木材が存在しています。木材は限られた資源とは違い、再生可能で持続的に使い続けられる資源です。

現在の日本では、海外産木材の輸入増加による国内林業の衰退や、森林の手入れを怠るなどさまざまな問題を抱えています。数ある木材の性質や特徴を正しく理解し、その理解をものづくりの現場に活かすことができれば、木材の正しい需要が増え、森や木材に関する問題解決に繋げることができるのではないでしょうか。

そこで連載コラム【SDGs時代の木とデザイン】では、木材コーディネート集団である森未来(しんみらい)の代表・浅野純平さんに、木にまつわるさまざまなことをご紹介していただきます!第1回のテーマは「木材はサステナブルなのか?」です。

改めまして、株式会社森未来の浅野です。第1回は「木材はサステナブルなのか?」というテーマで話したいと思います。

弊社にも、「クライアントからサステナブルな提案を求められているので、国産材を使いたい」という相談をいただくことがあります。一見、サステナブルなようですが、よく考えると下記のような疑問が出てきます……。

・木材はサステナブル?
・国産材だとなぜサステナブル?

まず、「木材はサステナブルなのか」という点で考えると、おおよそ間違っていないかと思います。しかし、それにはいくつかの条件が付帯します。木材という素材で考えると、下記のような特徴があります。

・50~60年というサイクルで再生産される資源である
・成長する過程でCO2を吸収し、木材として使用することでCO2を固定できる

ですが、おもに外国産材を使用する際、その木材が違法伐採材ではないということが前提となります。また合法証明の取れた国産材であっても、伐採後に再造林されている木材というのが重要なポイントです。

森未来 人工林の齢級構成グラフ

上の図は、人工林の齢級構成ですが、ご覧の通り若年性が少ない(=植えていない)ということがわかります。いま現在は先人たちが植えた森林が育っているため木材資源が豊富ですが、20年後、30年後はそうではないことがわかります。

現状の再造林率は3割程度となっており、逆に見ると多くが再造林されてない森林由来の木材と言えます。そのような木材はサステナブルではないということがわかるかと思います。

また、CO2排出の観点からも考えてみます。木材は製造時における二酸化炭素の排出量が、ほかの建材、鋼材と比べ、極端に少ないことがわかります。

森未来 二酸化炭素排出量

そのほかにも、木材の移動によってCO2も排出されます。これは必ずしも外材のCO2排出量が多いわけではなく、適切なサプライチェーンを組んでいない場合、国産材でもCO2の排出量が多くなるケースがあります。

森未来 ウッドマイレージ

2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が定められてから8年。これまでの「間伐材、国産材を使っていれば環境にいいんでしょ?」というフェーズから、徐々にこのようなエビデンスも求められる木材調達へとフェーズが変わってきているように感じます。

説教臭い文章になってしまいましたが、まとめると次のようなことが今後必要になると思います。

・合法証明の取れた木材を使おう
・再造林された木材を使おう
・ウッドマイレージ(※)にも極力配慮しよう

※「ウッドマイレージ」:木材の輸送量と輸送距離を乗じ、輸送時の環境負荷を数値化したもの

これらのことを設計者、デザイナーの方が考えてスペックすることは非常に大変な作業かと思います。デザイナーは本来の主たる業務であるデザインに集中し、サステナブル性に関しては専門的な観点からアドバイスを受けることをおすすめします。そうすることで完成した建築・内装が、デザイン的にも環境配慮的にも優れた物件になるのではないかと思います。

次回は最近問い合わせの多い、「サステナブルウッド商品」についてご紹介したいと思います。

【森未来からのお知らせ】
■第4回連続トークライブ in 森未来「森とまちの未来を考える」

第1回:森とまちと木材活用~木材の様々な活用方法とは~
登壇者:古川泰司さん(アトリエフルカワ一級建築士事務所)、山田敏博さん(NPO法人team Timberize 副理事長、株式会社HUG 代表取締役)
日時:11月8日(水)19:00~21:00
場所:
・森未来セミナースペース(東京都港区芝5-27-6 泉田町ビル7F)
・オンライン(ZOOM)
定員:各20名
費用:2万円(全4回)
https://www.etree.jp/content/event_notice/seminar-0032/

株式会社森未来

株式会社森未来

木材が適正な価値を持ち、全てのプレイヤーに適切に還元される社会“Sustainable Forest”をミッションに事業を展開。木材プラットフォーム「eTREE(イーツリー)」を運営しており、木材の利活用や調達加工をサポートしている。

https://shin-mirai.co.jp/

浅野純平
IT業界から林業で起業するために転身。東京都の秋川木材協同組合で事務局長を務める。2016年株式会社森未来を設立。