【SDGs時代の木とデザイン】第2回:サステナブルウッドの紹介

【SDGs時代の木とデザイン】第2回:サステナブルウッドの紹介
森林大国である日本にはさまざまな木材が存在しています。木材は限られた資源とは違い、再生可能で持続的に使い続けられる資源です。

現在の日本では、海外産木材の輸入増加による国内林業の衰退や、森林の手入れを怠るなどさまざまな問題を抱えています。数ある木材の性質や特徴を正しく理解し、その理解をものづくりの現場に活かすことができれば、木材の正しい需要が増え、森や木材に関する問題解決に繋げることができるのではないでしょうか。

そこで連載コラム【SDGs時代の木とデザイン】では、木材コーディネート集団である森未来(しんみらい)の代表・浅野純平さんに、木にまつわるさまざまなことをご紹介していただきます!第2回のテーマは「サステナブルウッドの紹介」です。

こんにちは、森未来の浅野です。

第1回では、「木材はサステナブルなのか?」というお話しをさせていただきました。今回は、最近よくご相談いただく、サステナブルな建材とそのトレンドについてご紹介します。

森未来が内装業界向けに木材を提案しはじめたのが2020年頃です。それまでは一般の方から建築業界まで幅広く木材を販売していましたが、ある展示会に出展したところ、多くの内装デザイナーからもご相談をいただくようになり、内装業界について調べるようになりました。実際に商談を進めるなかで多くあった声は以下です。

・内装業界はスクラップ&ビルドのため、環境への負荷が非常に大きい
・内装のトレンドも自然素材やグリーンが注目されるようになってきた
・木材関係の素材を使おうと思っても、誰に聞いたらよいかわからない
・内装制限が入るため、木材は使えないものだと思っていた

そこで、内装業界の方々が興味を引きそうな木質建材を集めて、ご紹介する「eTREEセレクション」をはじめました。

一口にサステナブルと言っても、いろいろな切り口があります。当社では、6つの要素に分けてご提案しています。

森未来 6つの要素

しかし、これらが本質的にサステナブルかどうかというと、難しい部分が正直あります。それは第1回でお話しした通りです。

企業やデザイナーから求められており、かつ本当の意味でサステナブル(=持続可能な森林経営)な木材。ここでわたしたちが提案したいのが、「Due Diligence(潜在的な木材の調達リスク)」と「Storys(地域への環境・社会貢献)」という2つの考えの木材コーディネートです。

森未来 「Due Diligence(潜在的な木材の調達リスク)」と「Storys(地域への環境・社会貢献)」

■Due Diligence(潜在的な木材の調達リスク)

大きな社会的な要因に、2025年のクリーンウッド法改正があります。2017年に施工されたクリーンウッド法は、2023年2月に改正案が国会に提出され、閣議決定されました。改正案は、2025年の施行に向けて準備が進んでいます。

森未来 クリーンウッド法改正

大きな改正点は、これまで事業者の努力義務としていた合法性の確認が義務化され、罰則措置も盛り込み強制力を持つことです。これは国産材においても同様です。これまでの「間伐材や国産材を使っていれば環境に貢献しているんでしょ?」は通用しなくなり、産地確認の明示、さらに明確になった産地の「Due Diligence」も求められるようになります。

法改正以上に、ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)の背景も強まっています。2022年12月の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、生物多様性枠組が決定されました。生物多様性保全への貢献が、今後の企業課題となってきます。

そのような社会になることはもはや確実視されており、木材の「Due Diligence」はこれまで以上に厳格になっていくでしょう。

■Storys(地域への環境・社会貢献)

社会的な背景として「Due Diligence」が求められているのはわかりますが、それだけだとデザイン・設計として面白くない。ある意味デザイナーからは「Due Diligence」以上に木材に期待されているのが「Storys」です。「せっかく木材を使うのだから地域へ貢献したい」「地域や森林をもっと身近に感じてほしい」という声が増えています。

以前、オフィス内装を手がける会社から、これまでは既成のスチール家具を使用していたが、実際に使う従業員が愛着をもって使えるようにしたいという仕事の依頼を受けました。

そこで従業員の方を林業産地にお連れし、伐採体験をしてもらい、その木を使って会議テーブルをつくりました。

森未来 伐採体験の様子

伐採体験の様子

内覧会の際には、「この木は私が伐ったんですよ」ととても喜んでいただきました。さらにこのケースでは、林業産地から直接丸太を買い付けているので、不必要な中間流通を通すことなく、資金を直接森林へ還元することができました。

森未来 社員の方が制作した会議室用テーブル

社員の方が制作した会議テーブル

これが鉄骨などの場合は、「現地まで見に行こう」とはならないはずです。木材は木材というマテリアルを通して、生産者の顔や地域をつなげることができる、特殊な素材だといえるかもしれません。

当時はできませんでしたが、今後はさらに「Due Diligence」も組み合わせ、トレーサビリティ、植林、森林への資金循環などをセットにご提案が可能です。これが私たちの考えるサステナブルな木材、「Due Diligence」と「Storys」です。

じゃあ、その要件を備えたサステナブルな木材はどれですか?という質問が挙がると思いますが、いまある在庫からすぐに「これです」と出せる商品は少なく、工場や産地と調整してオーダーメイドで対応しているのが現状です。限られた納期の中ではできないこともありますが、設計者やデザイナーが扱いやすいよう、データ整備を進めています。

第3回は今回も少し触れましたが、森林認証とクリーンウッド法というテーマで書いてみようと思います。

【森未来からのお知らせ】
■第4回持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー2023
『森と建築を一緒に考える』とどんな世の中になるのかな?ー建築関係者と一緒に考える

登壇者:古川泰司さん(アトリエフルカワ一級建築士事務所)、藤原敬さん(一般社団法人持続可能な森林フォーラム 代表)
日時:2023年12月2日(土) 13:30~15:30
場所:オンライン(ウェビナー開催)
定員:200名(先着順)
費用:無料
https://www.etree.jp/content/event_notice/seminar-0019/

株式会社森未来

株式会社森未来

木材が適正な価値を持ち、全てのプレイヤーに適切に還元される社会“Sustainable Forest”をミッションに事業を展開。木材プラットフォーム「eTREE(イーツリー)」を運営しており、木材の利活用や調達加工をサポートしている。

https://shin-mirai.co.jp/

浅野純平
IT業界から林業で起業するために転身。東京都の秋川木材協同組合で事務局長を務める。2016年株式会社森未来を設立。