JDN編集部の「そういえば、」2020年4月

JDN編集部の「そういえば、」2020年4月

ニュースのネタを探したり、取材に向けた打ち合わせ、企画会議など、編集部では日々いろいろな話をしていますが、なんてことない雑談やこれといって落としどころのない話というのが案外盛り上がるし、あとあとなにかの役に立ったりするんじゃないかなあと思うんです。

どうしても言いたいわけではなく、特別伝えたいわけでもない。そんな、余談以上コンテンツ未満な読み物としてお届けする、JDN編集部の「そういえば、」。デザインに関係ある話、あんまりない話、ひっくるめてどうぞ。

創作意欲が湧くアプリ「procreate」

そういえば、最近、iPad用に新しいアプリを購入しました。「Procreate」という、プロのクリエイターからアーティストを志す人まで、世界中で愛用されているお絵描きアプリです。

以前、「さいきん、なに買った?」でお話をうかがった、イラストレーターの飯尾あすかさんがとても使いやすくて楽しいとお話しされていたのが気になっていて、外出自粛ムードに入ってすぐに購入しました。

使い始めてすぐに感じたのは「気持ちいい…!」と毎回思うほどの、描画の心地よさ。Apple Pencilを使って描くとわかりやすいのですが、ペンに込める力の入れ具合をとても敏感に画面に投影してくれることや、自分が描いた線をきれいに調整してくれる機能などもあって、ストレスが少なく自分が描きたいものを表現できるアプリです。

下記は、プロのクリエイターがprocreateを使って描いたイラストの制作動画の一例です。

魅力はさまざまありますが、鉛筆やエアーブラシ、水彩、木炭、カリグラフィなど描画ブラシの種類が200近くもあり豊富なことや、色の選択や部分修正する際など作業インターフェースが感覚的にわかりやすく設計されているところだと思います。さらに、描画ブラシの1つひとつが自分好みにカスタマイズできるのもポイントです。

さまさまな描画ブラシがあり、背景の雲のような部分もかんたんに表現できます。

まだまだ使い始めたばかりで機能の半分もわかっていませんが、いつもより長いおうち時間を使って創作モードで過ごしたいと思います。

(石田 織座)

日々の「あたりまえ」と1本のやくさじ

そういえば、リモートワークになってからは、キッチンの小さなテーブルにiPadを置いて日々仕事をしているのですが、お昼の休憩時間になればエプロンをつけてすぐにお昼ごはんをつくり、ちょっと集中力が切れてきたなと感じたらコーヒーを淹れて、仕事が終わったらすぐに夕ごはんをつくりはじめるような、そんな毎日を過ごしています。そうすると、すこしでもキッチンの居心地や使い心地をよくしたくなる気持ちが湧いてくるんですね。

で、つい器や調理器具の見直しをはじめてしまったのですが(そういう気晴らしがなんだかいまはとても必要)、その中でも買ってよかったなと思ったのは、2019年のグッドデザイン・ベスト100に選ばれていた、一菱金属株式会社のブランド「conte」のやくさじでした。

昨年のグッドデザイン賞の審査報告会に参加した時に、この1本のやくさじが、いかに日々料理をするひとの使い勝手に寄り添い、かつ、たたずまいが美しいものとして仕上げられているかということを、審査員の川上典李子さんがお話しされていたのがとても印象に残っていました。実際に使ってみると、決して主役ではないにしろ、日々の料理を支えてくれる道具としての頼もしさを感じてしまうような、とても考られたデザインの1本だということがわかります。

持ちやすく、洗いやすく、そして柄が長くしっかりとしたつくりのため、計ったあとにそのまま混ぜることができる。そして、収納した時の姿をみていると「なんかいいな」とうれしくなるような、そんな魅力がある。

ぼくはもともとスイスアーミー的な多機能性があんまり得意ではないんです。「これさえあればなんでもできて安心」というものは、便利なことに変わりはないんだろうけれど、それよりも「これしかできない」っていう道具に惹かれてしまいます。

家の中にあるものでも、南部鉄器のブランド「釜定」の栓抜きや、「DULTON」のキッチンタイマー、柴田文江さんがデザインした無印良品のヘルスメーターなど、機能は1つしかないけれど、ものとしてのたたずまいがいいものに弱い。ボールペンも、1色しか出ないものがいいんです。今回買ったやくさじも、なんだかそういう意味でじぶんの暮らしにしっくりくるものとして、ずっと使い続けるんだろうなという気がしています。

この数ヶ月で、世界中のあらゆる「あたりまえ」が見直される状況にあると思います。日々の過ごし方が変わり、暮らしている街や国、そして世界中が大きな変化の只中にいる。ついそんなあらゆることに考えを巡らせると、答えのない状況に萎縮してしまうような気持ちになるのですが、いまは家の中の「あたりまえ」を日々きちんとやるということが、大げさかもしれないですが、世界の大きな変化への第一歩なんだろうなという気がしています。

とはいえ、気分が落ち込む時はもう生活のすべてを投げ出して「ゲーム・オブ・スローンズ」を(ようやく)観てやろうと思ったり。生活と心のバランスを、うまくとっていきたいものです。

(堀合 俊博)