学芸出版社
学芸出版社のおすすめ書籍

ソーシャルアート

障害のある人とアートで社会を変える

ソーシャルアート

障害のある方や福祉施設スタッフ、アーティスト、プロデューサー、音楽家、ダンサー、演出家らが実践する「アート×福祉×コミュニティ×仕事」25の現場。

アーティストの原動力やスタッフによる創作のサポート、表現の魅力を発信する仕掛け、新しいアートの鑑賞法、創造的で多様な仕事づくりなど多彩に紹介。

細馬宏通(滋賀県立大学人間文化学部教授)おすすめコメント

知らないことだらけだ。

わたしはこの『ソーシャルアート』で紹介されているいくつかの活動は拝見したことがあるし、「音遊びの会」のメンバーでもある。実は、「障害のある人とアートで社会を変える」という本書のサブタイトルを見たとき、おおよそわかっていることを確認するつもりで読み始めた。しかし、それは全くの思い上がりだった。知らないことだらけなのだ。

たとえば、最初の「光島貴之×吉岡洋」の対談からしてそうだ。そこで、光島さんは、作品を作っていくうちにだんだん「目が見えない」ということ自体を押し出すやり方や「障害者アート」や「アール・ブリュット」という枠組に、違和感を感じるようになったのだという。それで、吉岡さんと考えるうちに「バリアフリー」ではなく「バリアコンシャス」ということばにたどり着いた。

それは単なるフリーからコンシャスへのことばの言い換えではなく、障害というバリアを取り除くという一方的な見方から、誰もが知らず知らずのうちに持っているバリアを意識する見方へという、いわばバリアを感じている主体の変更を促すような視点だ。

この本が次々と知らないことを提示してくれる要因のひとつは、執筆陣のバランスの良さだ。自ら動く人もいれば、共に動いている人、動く場所を作っている人もいる。動こうとするまさにそのときについて書いている人もいれば、動くまでにいたるさまざまな生活の営みを書いている人もいる。動く場所をとりまく地域について考えている人もいる。絵画、音楽、演劇、ダンス、どんな動きに結実するかはそれぞれの人がどんな生き方を発見していくかによって違ってくる。“多様性”というと収まりがよすぎる。わたしたちは何をやってもよいのではなく、何をやっても自分のバリアを意識することになる。自分の知らない自分のバリアがあること、しかしそこから始まる何かがあることを、この本は教えてくれる。


発行 学芸出版社
著者 森下静香、光島貴之、吉岡洋、森田かずよ、大谷燠、ウルシマトモコ、中津川浩章、中島香織、木ノ戸昌幸、新澤克憲、山下完和、鈴木励滋、栗原彬、佐久間新、大澤寅雄、五島智子、富田大介、沼田里衣、永山智行、田野智子、中川真、久保田翠、新川修平、ほんまなおき、林建太、川上文雄、岡部太郎、井尻貴子、樋口龍二、柴崎由美子、若林朋子、播磨靖夫
編著 たんぽぽの家
デザイン 藤田康平
仕様 四六判、304ページ
価格 2,400円(税抜)
ISBN 978-4-7615-2630-6