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ローカルメディアの仕事術

人と地域をつなぐ8つのメソッド

ローカルメディアの仕事術

地域に根付き、多様な人をつなぎながら、継続するための考え方とノウハウ。全体像からディテールまで、1:プロデュース、2:編集、3:チームづくり、4:デザイン、5:ウェブサイト運営、6:取材&インタビュー、7:文章の書き方、8:写真の撮り方を、エキスパートたちが実例で解説する。初めてつくる人にも経験者にも、必ず気づきのある現場からの学び。

尾内志帆(住まいマガジン びお編集長/一般社団法人町の工務店ネット)おすすめコメント

「ローカルメディアに求められる『編集』とは何か。」


「地域×編集」というテーマで特集される記事や媒体が目につくようになった。実際、都市から地方へ移住する編集者や、ある地域へ足繁く通う編集者ともよく出会う。かく言う私も、昨夏に15年住んだ東京を離れ、浜松市へ拠点を移した。全国にある地域に根ざした工務店の広報担当者とともに、自社メディアやSNSをローカルメディアとして育てる手伝いを始めている。


このように、編集者が地方に活路を模索する中で、影山裕樹さんの新著が発刊された。前書では、全国で展開しているローカルメディアの事例紹介を、そして、ローカルメディアシリーズ2冊目となる本書は、ローカルメディアの実践者がそれぞれの仕事を8つのテーマに沿ってより詳しく紹介している。まさに私のような編集者にとって待望の続編だ。


とはいえ、本書はこれまで発刊されてきた出版業界の実用書とはちがう。職人的技能からプロジェクト全体をマネジメントするプロデューサー的視点まで、「編集」の職能が広義的に扱われている。


本書が紹介する「ローカルメディアの編集術」の中で私がもっとも重要だと感じたのは、編集者である前に一人の人としての所作やふるまい、そして人と人とのコミュニケーションのあり方についてだ。たとえば、『はま太郎』編集長の成田希さんによる「取材&インタビュー術」では、「(取材相手と)同じ地域に生きる『個人対個人』として接すること」や「自分の人間性を少しずつ出していくこと」。また、フリーライターの小松理虔さんの「文章術と心構え」では、「私」が書くことの重要性が説かれ、文章構成の中に「私見」を入れることが推奨されている。ローカルメディアは、顔の見える関係性の中で制作されることが多い。ローカルを前提としているからこそ、求められる編集術があるのだ。


影山さんは、多くの地域が抱える一番の課題を「地元の人たちが、自分が暮らす土地に誇りを持てないこと」だとし、「大事なのは、外から押し付けられるイメージを跳ね返し、自分たちの地域の価値を自分たちで決めるための場所=メディアを持つことである」と言う。地域の人が当たり前の生活の中から潜在的な地域の魅力に気づき、それについて「私」を通して発信する。ローカルメディアをつくるプロセスには、異なるコミュニティとつながるきっかけがあり、ひいてはメディアの編集が「まちの再編集」へと発展する可能性もある。


そんなローカルメディアの展望が示唆された本書は、編集者のみならずこれから地方で仕事をしたいすべての人に読んでもらいたい一冊だ。


発行 学芸出版社
編著 影山裕樹
著者 幅允孝・多田智美・原田祐馬・原田一博・成田希・小松理虔・山崎亮
デザイン UMA / design farm
仕様 四六判、252ページ
価格 2,000円(税別)
ISBN 978-4-7615-2679-5