ミラノサローネ50周年記念
今年は、ミラノサローネ50周年の記念すべき年であり、開催前から大きな盛り上がりが期待されていた。しかし、日本で東北関東大震災が起き、浮かれる気分になれない方も多かったのではないだろうか。食品ばかりでなく工業製品にまで風評被害が広がる今、日本の出展者はサローネに来るのだろうか? 来訪客はあるだろうか? そんな心配が頭をよぎった。問題を抱えているのは日本だけではない。国連安全保障理事会決議に基づくリビアでの空爆などで、中近東も混乱の渦中にある。またサローネ開催地のイタリアも、チュニジア政変の影響による北アフリカからの難民の受け入れで四苦八苦している。そのような国際情勢のなかで今年のサローネはどうなるのだろう、と一抹の不安を持ったまま会場へ向かった。
実際に足を運んでみれば、会場の中も外も大盛況であった。【写真20】は4月13日の夕方4時の見本市会場入り口付近。この時間でも多くの来場者で賑わっており、午前はこの数倍の人で混み合った。
日本のメーカー奮闘
ミラノの街のいたるところに、日本のメーカーの展示会やデザイナーによるイベントが目白押しだ。早速、展示会場を訪ねた。出展を中止する企業も多数出ると予想していたが、例年と変わらず皆がんばって参加していた。イタリア在住の日本人デザイナーはもちろん、欧州の様々なメーカーとコラボレーションする深澤直人や吉岡徳仁を始め、若手の活躍ぶりには目を見張るものがあった。見本市本会場だけでなく、ブレラ地区やトルトーナ地区などで展示を行う日本の各社、ミラノにショールームまで構えた京都のSferaなどの奮闘からも、日本の底力を感じた。
「震災の影響もあり出展を取り止めようか迷いましたが、思い切って来ました。私たちの製品には福島県の山岳地帯の材木を使っていますから、復興の手助けにもなりますし、今ここで停滞するわけにはいきません」と、ある家具メーカーの広報の女性は話す。「毎年出展を続けることで、評価が上がってきています。お客さまの反応も良いですね。」と別のメーカーからも前向きな声を聞くことが出来た。
ハイテクノロジー、ローテクノロジーそしてデザイン
日本のメーカーが、家具市場において長い歴史を持つ欧州の強豪と張り合うのは大変なことだ。中国などアジア勢の進出も目覚ましい。しかし日本にはハイテクノロジーという強みがある。その強みは、キヤノンや東芝、ヤマギワ、三菱化学Verbatimなどのプレゼンテーションからも見えてくる。また、もうひとつの日本の強みである“無駄のないデザインと素材を生かした技”を、中小の家具メーカーが見せていた。
これから数年間、いろいろな意味で日本は厳しい時代に入るかもしれない。だが、ピンチはチャンスとも言う。日本にしかできないデザイン、日本だからこその技術で、海外へ進出し続けてほしい。
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【 1 】 ブレラ地区の建築デザイン専門書店のギャラリーL’Archivoltoで展示会をした、ヤマギワのBiolite Moving デザイン:蓮池槇朗
【 2 】 和の美。伊東豊雄デザインのヤマギワのMayuhama Black
【 3 】 「光」をデザインしたヤマギワのU-Pendant直接&間接照明 デザイン:内山章一
【 4 】 ミニマルの極み。ヤマギワのLed Flat Light デザイン:ヤマギワ
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※クリックで拡大
【 5 】 KARIMOKU NEW STANDARD / カラフルなシリーズHomerunのキッズチェア。 デザイン:Syvain Wilenz |
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【 6 】 KARIMOKU NEW STANDARD / 繊細でカラフルなスツールColour Stool。 デザイン : Scholten&Baijing |
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【 7 】 ブレラ地区で展示会を行ったKARIMOKU NEW STANDARDの会場風景 photo: Shin Suzuki
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【 8 】 カリモク社 / 見本市会場でプレゼンテーションされたNext Japonism。着物作家・斎藤上太郎のアートワークによる西陣織を使った椅子。
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【 9 】 見本市会場のマルニ社ブース
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【 10 】 マルニ木工 / 限りなくシンプルで、木工技術を駆使した椅子を見せるRoundish。 デザイン:深澤直人
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【 11 】 マルニ木工 / 一見普通だがディティールまで無駄なく美しいLightwoo。 デザイン:Jasper Morrison
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【 12 】 福岡のRitzwell社のスツールVincent stool
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【 13 】 Ritzwell / 大正モダンを彷彿とさせるRivage easy chair
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【 14 】 Ritzwell / バックが美しいCharlie chair
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【 15 】 カリモク、マルニ、Ritzwellとともに出展したヤマカワラタンのブース。 ソファのデザイン:Hiroomi Tahara.
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【 16 】 イタリア、日本のデザイナーと京都の職人技術が融合されたACQUAプロジェクトより。岩城製作所のメッシュステンレスキャビネットAufbau と横山竹材店のキャンドルスタンドSteele。 ともにデザイン:P.Schianchi
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【 17 】 左:横山竹材店のタオルハンガーDreifuss 右:岩城製作所のタオル掛けキャビネットTakekake。 ともにデザイン:山下順三
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【 18 】 IRORIと丸二による唐紙や織物のパーテーションByoubu。 デザイン:G.Chigiotti
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【 19 】 IRORIと丸二による織物シャワーカーテンWasser。 デザイン:P.Schianchi
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【 20 】 2日目の夕方4時の見本市会場入り口付近。午前中よりははるかに空いているとはいえ、まだまだ入場者は絶えない。
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【 21 】 毎年興味深い展示を見せるキヤノン。今年は長さ16mの無数の糸を使った三次元映像のイリュージョン的な迫力あるイベント「NEOREAL WONDER」。トラフ建築設計事務所とWOWのコラボレーションによるプロジェクト。
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【 22 】 三菱化学Verbatimの有機EL、Velveのプレゼンテーションは、さまざまな色、形状、使い方の可能性を示し、来場者を魅了した。
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【 23 】 三菱化学Verbatimの有機EL、Velveのプレゼンテーション
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【 24 】 三菱化学Verbatimの有機ELのプレゼンテーション
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【 25 】 三菱化学Verbatimの有機EL、Velveのプレゼンテーション
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